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番外編 / 出会い03
ナナと呼ばれた女の子が俺を見上げる。なんだか憎っくき敵を見上げるみたいな視線に、なんでテメェお菓子持ってねえんだよ、と脳内でアテレコ行われる。多分あながち間違ってない。お菓子か…お菓子は生憎持ってないんだよな…
「というわけでお菓子持ってる奴居ないかなーて探してたんだ。急に悪かった。…おいで、ナナ。屋台でなんか買ってあげるからそれで我慢しよう」
彼は俺に申し訳無さそうな笑顔を向けてから、ナナちゃんを抱っこしようと腕を伸ばす。爪も衣装に合わせてか黒く塗っていて、その手が凄く綺麗だった。そんな奇抜な色、俺の指にはきっと似合わない。血管の浮いた腕は男らしく、その先にある男性ハンドモデルみたいな長い指には一瞬目を奪われた。
――俺、手フェチだったのか…
自分の新しい性癖の発見に戸惑いながら様子を見ていると、彼が伸ばした腕に渋々と言った様子で下から手を伸ばしたナナちゃん。相当お菓子に未練があるようだ。
子供にとってお菓子ってかなりの重要事項だ。本当にどっかに無かっただろうか…
「あ!!」
ハッとした。
「どうかした?」
「まだその子のお母さん来ないよな?だったらちょっと俺のクラスまで来ないか?」
ーーー
「はい、ナナちゃん。好きなお菓子ある?」
彼に抱っこされたままぐずぐず言うナナちゃんの目の前にリボンが巻かれたバスケットを差し出す。お化け屋敷の受付の女の子たちがヴァンパイアの彼を見ながら内緒話のようにキャアキャアはしゃいでいるが、まあこれだけ顔が良ければ人気もあるんだろう。残念ながら俺は赤髪赤眼のおかげで誰なのかイマイチ分からないが、きっとどこかで一度は見たことがある生徒なんだとは思う。
「これは?」
「あ、コレこのお化け屋敷を無事ゴール出来た人達に配ってるやつなんだ。だから気にしないで2~3個持ってっちゃってよ。思った以上に人来なくて余りそうでさ」
「ラムネ!ナナ、ラムネ食べたい!」
先程までのこの世の終わりみたいな表情だったのに、お菓子を見せた瞬間パアッと表情が明るくなり両手をバスケットに伸ばしてくるナナちゃん。
俺はお菓子で溢れかえるバスケットの中から小包装されたカラフルなラムネを手に取った。
「これ?はい、どうぞ」
「わぁーい!おにいちゃん、ありがとう!」
「お。ちゃんとお礼言えるんだな。偉い偉い」
俺ん家には気の強い姉しか居ないから、こんな可愛い妹欲しかった。
それにしてもこんな天使みたいな笑顔を見られるなら、お菓子のこと思い出して本当に良かった。まさに灯台下暗し。
デレッと崩れまくる笑顔で、よしよしと細くて柔らかい髪の毛を撫でているとナナちゃんの斜め上から視線を感じた。
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