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ねこになりたくない-3

その日の夜に式は全て思い出した。 大好きな飼い主の寝息、彼の優しい家族が階下で奏でる笑い声、静かな雨音をうつらうつら聞きながら……。 「ぐちゃぐちゃになった、おれのこと。隹。ひろってくれた」 痛くて、苦しくて、怖くて、淋しくて、暗くて。 だけど、あたたかくて。 『式。死に際にひとりぼっちは淋しいだろ』 そのまま果ててもいいと思えたくらい、そこは居心地のいい場所だった。 「式」 特に予定のない日曜日を明日に控えて早めに就寝しようとした隹であったが、リビングの窓をコンコンとノックする音が聞こえるなり一発で完全に目が覚めた。 ずぶ濡れの式が黒猫姿でベランダにいた。 窓を開けて招いてやれば人の姿になって、隹が羽織っていたパーカーの裾をぎゅっと握って、バイクに跳ねられた鮮明な記憶と冷たい雨に濡れて震えつつも……笑った。 「ありがとう。隹」 ああ、馬鹿だな、式。 どうして戻ってきた。 もう二度とどこにも逃がさない。 微かに聞こえてくる雨音。 ソファで眠る隹の懐から抜け出し、裸身にパーカーを羽織った式は、ぺた、ぺた、リビングを横切って窓辺に立つとカーテンを細く開いた。 朝を迎えても暗い曇天に首を傾げる。 勉強机の上に置かれていたノートの最終ページに「さよなら」と書いて元飼い主とお別れしてきた猫又。 ひんやりしたガラスに瑞々しい頬を片方くっつけて小さなため息をついた。 「式」 振り返る前に華奢な体に後ろからきつく絡みついた両腕。 「どこ行くつもりだ」 半裸の隹は白いうなじに囁きかける。 ゆうべ自分がつけた痕を唇でなぞる。 「ううん。どこも行かない……くすぐったい」 「あのガキのところに戻りたいのか」 「ガキじゃない。そんな名前じゃない。あの子の名前は、」 「興味ねぇよ」 ちょっと怒ったように尖らされた眼差しに反省するでもなく改めて式を抱き直した。 痕を増やすように柔な肌身を強めに啄んだ。 「……痛いの、やだ」 ゆうべのことを思い出して黒猫耳をシュンと伏せた式、体を捩じらせて弱々しげに抱擁を嫌がる彼に隹は言う。 「優しくしてやっただろ」 「ううん。痛かった。やだ」 「ワガママ言うな」 拒む唇を諌めるかのように隹の指が式の口内を訪れた。 「初めてコレが濡れたんだろ」 唇奥にたまった微熱を指の腹で堪能するのと同時に何の反応も示していないソコをおもむろに握りしめた。 「爆ぜるみたいに弾いただろ」 「ん……む……あれ、やだ……こわい……」 「怖くねぇよ」 「さわっちゃ、やだ……隹、やめ……」 隹は式の唾液で濡れた指を双丘の狭間に滑り込ませた。 夜更けにかけて自身の熱源で念入りに開かせた仮膣を再び拡張していく。 式はカーテンをぐっと握った。 長く太い指で入り口を抉じ開けられる。 押し開かれたばかりであるにも関わらず刺激をたっぷり浴びせられて露骨にざわつく奥まったところを直に撫で上げられて、ぴくん、黒猫耳が震えた。 「なぁ、式、本当に嫌なら猫に戻ればいい」
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