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ねこになりたくない-4

夜通し快楽をすり込まれた前と後ろを再び容赦なく愛撫された。 抗う術もわからずにすんなり昂ぶっていく下半身。 カーテンに縋りついて目立たない喉骨を頻りに波打たせる式に隹もまた。 「嫌じゃないんだろ」 太腿に触れた硬い感触に切れ長な双眸がさらにじんわり濡れた。 「俺との交尾。中毒にさせてやろうか」 耳たぶを火照らせる嗜虐的な囁き。 「俺はもうなってるけどな」 「あ、あ、あ……」 「ゆうべより熱い」 「にゃ……っぅ……」 「ゆうべよりもっと鳴いたらご褒美やるよ、たい焼き二つ、頭も尻尾も食べさせてやる」 「いらな……っにゃぁ……っ」 隹は立ったまま式と繋がった。 目覚めれば窓辺に立って外を見ているものだから、元飼い主を恋しがっているのかと柄にもなく嫉妬して、体も心も我が身に留まるよう抱きしめた。 実際、式は自分を育ててくれた人達のことを思い出してはいた。 しかし隹を選んだのは他でもない猫又自身だ。 死にゆく自分のそばにいてくれた相手とこれから先もずっと一緒にいたいと、切実な選択をしたのだ……。 「あ……っ……?」 引っ切り無しに窓に背中を擦らせていた式は目を見開かせた。 激しく痙攣したかと思えば胎内で熱流を迸らせた隹を怖々と見上げた。 ゆうべにはなかった……れっきとした種付け。 しっかり奥まで注ぎ込まれる感覚に背筋がゾクリと粟立った。 「な、に……これ……?」 「ん……正真正銘、交尾だろ」 「っ……おれ、メスじゃないっ……人間でもなぃっ……なのに、なんで……隹と交尾なんか……んっ……むっ……!」 華奢な体を軽々と抱え上げ、不埒な交尾に耽っていた隹は自分自身と窓で挟み込んだ式に口づけた。 初めてじゃないキス。 ゆうべ何度も何度も繰り返された。 これ……好き……。 これだけでいいのに……。 隹は式を抱っこしたまま寝室へ移動した。 ベッド上に座るとパーカーが脱げかけている猫又を向かい合わせに膝上に座らせ、キスを続け、やや頭を擡げて先走りに湿っていた性器を掌に抱いた。 「んんん……っ」 小刻みに細腰をビクつかせて肩に爪を立ててきた式を薄目がちに見つめる。 上下の唇をぐっしょり濡らし、涙を溢れさせ、絶頂を間近にして切なげに鳴く猫又に釘づけになった。 式は程なくして白濁の飛沫を散らした。 ゆうべよりも欲望に忠実な隹になされるがまま、絶頂を強いられたばかりで発熱する身にすぐさまペニスを打ちつけられて、声も上げられずに痛いくらい仰け反った。 「そうだな、今日は一日中交尾の日にするか、なぁ式……?」 「フーーー……ッフーーー……ッ」 「鳴けよ、式」 「ぅぅっ……きらいっ……きらいっ……隹きらいっ」 「は……猫又にも色んな鳴き方があるんだな」 「っ……すい、の、ばか……っ」 式の奥の奥まで残さず愛して、隹は、悔しげに泣きじゃくる猫又に告げた。 「俺以外の誰かと交尾したら一生檻暮らしだと思え」 「あっ……あっ……あっ……」 「たい焼き、はんぶんこしていいのも、俺だけだからな」 「っ、っ、っ……おなか……もぉ、いっぱぃ……」 「看取るのはもう一生ナシだからな、式」 パーカーの袖口を噛んで一向に勢いの冷めやらない過激律動に貫かれていた式は半開きの双眸で隹を見上げた。 「今度はお前が俺を見送ってくれよ」 隹、それって、いつ……? 離れ離れになるの、いつ……? きらいじゃないよ。 ずっといっしょにいてほしい。 「……うん……」 爪を立てないよう式は隹を抱きしめた。 土曜の昼下がり、冬枯れた公園で目深にかぶったフードのパーカー越しに元飼い主とその家族を式は見つけた。 「たい焼き買ってくる」 隹は公園に式を残して自分だけ立ち去ろうとした。 「おれもいっしょ行く」 式は隹の隣をついていった。 「隹、かたち変なの、買ってくる。おれが選ぶ」 澄んだ寒空の元、落ち葉の吹き溜まりに連なった二人の影。 不規則な足音を面白がって隣を歩く式に隹は言った。 「俺の方こそ檻暮らしなのかもな」 「?」 俺は片時も自由になれないでお前にとっ捕まってる、式。

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