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ねこになりたくない-7
朝、鳥の囀りに目覚めを誘われた式が瞼を持ち上げてみればスーツを着用したままの隹の寝顔がすぐそこにあった。
ネクタイも締めたまま横になっている彼の瞼を式はまじまじと見つめた。
起き抜けながらも、昨夜、夢だと思っていた夜更けの帰宅が現実だったと思い知らされて頬がどんどん紅潮していく。
添い寝していた隹の隣から慌てて身を起こした。
一先ずリビングへ逃げようとベッドから立ち上がろうとしたら。
「おはよう、式」
式よりも狸寝入りが抜群に優秀だった隹に後ろから抱きしめられた。
「あ……っみゃぅっ……や、ぁ……っぁぅ、ぅ……っ」
「その鳴き声。仔猫みたいだな」
「っ……こねこじゃ、なぃ……っ、ぅみゃぁ……っ」
自分の黒シャツを乱して身悶える式の背中に隹はぴったり覆いかぶさっていた。
スーツはかろうじて脱ぎ捨て、緩めたネクタイ、第二ボタンまで開かれたワイシャツ。
下肢に纏っていた服は緩めた程度、すべすべした手触りのいい式の双丘に腰を密着させて、緩々とした律動を繰り広げる。
快晴の朝、外では学校や会社を目的地とした人々が足早にアスファルト上を行き交っていた。
「お前の声、甘い」
カーテンが閉め切られて薄暗い寝室、隹はとびきり不健全な朝を満喫する。
挿入前からずっと震えている式の悩ましげに熱いナカでペニスをより強く脈打たせる。
優しく突き上げながらすでに濡れ出している猫又のソレをクチュクチュと上下に撫でてやった。
「もぉ、やだ……おなかへった……っ朝ごはんたべる……っ」
確かに式のお腹はぐぅぐぅ鳴っていた、昨日ろくに食事をとっていなかったせいだろう。
「その前に俺を満腹にさせろ、式」
滑らかな首筋を露骨に舐め上げ、隹は愛しくて堪らない猫又に我が身を捧げ尽くそうとする。
「今度からはお前も連れてく」
「っ……ぇ……?」
「一泊だろうと、近場だろうと、海外だろうと。一緒に来い」
シーツに爪を立て、切なそうに眉根を寄せていた式の切れ長な双眸がぼろりと涙を弾いた。
もちろん出張先で失敗などせずに取引先に契約の継続を交わしてもらい良好な関係を築いてきた隹だが、ずっと、心は一つの恐れに囚われていた。
もしも俺が目を離していた隙に式が前の飼い主の元へ去っていたら。
「お前が嫌がっても連れてくからな」
「っ……いかない……おれ、いきたくない……狭い箱、きらい……っ」
「ケージが嫌ならその姿でもいいだろ、首輪つけて鎖で引っ張ってやる」
「ぜったいやだっっ……あっっ……あっっ……あっっ……」
奥を抉じ開けられ、満遍なく滾る先端で執拗に小突かれて式は喘ぎ、全身を食い尽くそうとする火照りに隹もまた息遣いが荒くなっていく。
舐めていた首筋を食んだ。
唇でほのかな微熱を味わいながら腰と利き手を一頻り動かした。
「もう独りにしないから」
式はぶるりと背中を波打たせた。
隹の絶頂に最奥を貫かれて、真摯な誓いに鼓膜までときめかせて、涙ぐむ猫又も溺れるほどの愛情を注がれて達した……。
「まだ食うのか」
「まだくう、たべる、おかわり」
「腹壊しても知らねぇぞ」
一緒にお風呂に入った後、デリバリー注文したピザを次から次に食べる食い意地の張った式に隹は苦笑した。
「ビール飲むか」
会社には今日まで出張と告げており、出社・報告書作成は明日でいいかと午前中から缶ビールを緩やかに煽る。
「それ、にがい、まずい」
「ミルクが口に合うなんて、やっぱりまだまだ仔猫だな」
「ちがうっ、おかわりっ、早くっ」
「がめつい猫だな」
「フーーーーーッッッ」
お前のこと置き去りにしないから。
俺のことも独りぼっちにするんじゃねぇぞ、式。
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