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Calling-2
ハイウェイ沿いのモーテルにて。
式は愛する者達が待つ我が家へ連絡を入れた。
「……ああ、車が故障して。明日の朝に修理してもらって、それから帰るから……あの子に謝っておいてくれる? すまない……うん……じゃあ、おやすみ……二人とも愛してるよ」
式は電話を切った。
彼の裸の胸の上で通話が終わるのを待ち構えていた隹は愛を囁いたばかりの唇をすかさず奪った。
「……ン」
ベッド下に投げやられた式の片手が携帯電話を床へ落とした。
そのままベッド上へと戻って逞しい裸の肩を抱いた。
緩々と互いに唇を開閉させて感触を確かめる。
舌先を交わらせては濡れた微熱の温度を上昇させる。
吐く息も食い尽くすように唇を塞ぎ合う。
「ん……ン……」
色めく声と衣擦れの音色が静寂を刻む。
おもむろに顔を上げた隹は連なる銀糸を断って、すでに喘ぐ式を見下ろした。
「昔はあんなに弱々しかったのに」
男になったな。
指通りのいい髪に額から指を差し込み、隹は、小さく笑う。
髪は短く、その双眸は前にもまして不敵な美しさに満ちていた。
俊敏な肉食獣の如きしなやかさと鋭さを備え、精悍となった彼に間近に見つめられて式は切なげに眉根を寄せた。
「そんな顔されたら加減できなくなる」
淫らに解れた表情に中てられた隹は体を起こす。
式も抱き上げて、自身の膝上に乗せると、正面を密着させる。
起き上がった拍子に毛布が捲れて二人の裸身が薄闇に浮かび上がった。
「ほら、もう、こんなに」
「……あ……俺も」
「もういいか?」
「いい、来て、隹……」
式の許しを得て隹はそのまま彼の中へ己を沈めていく。
「あ……あ……」
式は内腿を過剰に震わせて隹に陶然と縋りついた。
何度か奥に打ちつけられると、喉奥で悲鳴を殺し、掠れた甘い声を零す。
腰を掴まれてゆっくり回されると、狭い肉の中で痛いほどに隹の昂ぶりを感じ、呻吟した。
「んぁ……ぁ……すごい……」
「男は久々か?」
「……ああ」
「そうか」
隹は汗ばむ首筋に軽く口づけると呟いた。
「俺はお前が最初で最後だ」
式は目を見開かせた。
一つの驚きは、おもむろに始まった律動により速やかに溶けて消えた。
内壁の奥で屹立した隆起が狭苦しい肉を満遍なくなぞる。
擦り上げ、拡げ、さらに深いところを愛撫する。
「あ……ぁ、隹……ぁ……ぁ……」
式は身悶え、昂揚し、隹に抱き着いた。
背筋を辿る掌にびくりと肩を痙攣させ、シーツに膝を突き、自らも腰を揺らめかせる。
快感に従順に、先走りに濡れ始めた自身をしごいて、さらに隹をきつく締めつけた。
「お前の中、熱い」
「……ん」
「式」
促されて、逞しい肩に伏せていた顔を上げれば再びキスされた。
先程よりも濃厚な口づけに無心で及ぶ。
体の芯から溶けていくような気がした。
思考も、理性も、跡形なく。
隹は式を仰向けに寝かせると慈悲なき獣のように動き出した。
ベッドが壊れそうなまでに軋む。
式はされるがまま、隹を掻き抱いて、その肌に爪を立てた。
絶頂まであと僅か、その最も荒れ狂う放埓な束の間、絶えず揺れる肩の向こうに彼は幻影を垣間見た。
それは低い天井だとか、閉ざされたドア、または点滅する蛍光灯。
かつて、こうして体を交わす最中、隹の肩越しに見てきた光景だった。
「あ……!」
燃え立つように熱い感覚が下肢に広がり、じわり、欲望の雫に最奥を犯される。
喉を反らした式もすぐに隹の後を追った。
「隹……隹……隹……」
魘されるように何度も呼号して肉欲に濡れたひと時を分かち合う。
手触りのいい素肌に頬擦りし、縺れていく意識の中、式は隹に胸の内で語りかけた。
あの時、貴方が俺に背を向けて去っていった時。
本当は追いかけたかった。
この肩にこんな風に縋って、どこにも行かないで、ここにいてほしい、そう叫びたかった。
貴方と離れたくなかった、隹……。
片時も忘れたことのなかった最愛なる男に口づける。
呼び止めてほしかった。
この唇で、この声で。
ずっと一緒にいたかった、式。
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