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love me kill me/高校生弟×リーマン兄
■「俺は兄さんのことなら何でもわかるんだよ」
「なぁ、隹、もうこんなことやめてくれ……」
「誰かとセックスするつもりだったのかよ」
「隹ッ」
「俺に黙って勝手なことする嘘つきにはお仕置き必須だな」
自分が変わらなければいつまで経っても負のループから抜け出せない。
「飲み会……?」
企画・広報グループのスタッフである式(しき)は同僚のお誘いに切れ長な目を見張らせた。
休憩コーナーのガラス張りの壁際で一人缶コーヒーを傾けていた式の元へ気まり悪そうな様子で近寄ってきた同僚のお誘い内容というのは。
何でも美人率の高い秘書課と飲み会が決まったそうで。
しかし飲み会開催には一つの条件がついているらしく。
「俺が参加したら開催になるのか?」
心からキョトンとしている式に同僚は内心肩を竦めた。
スラリとした細身に品のいい端整な顔立ち、切れ長な双眸は立て続く残業に疲労するどころか常に凛としていて、姿勢もよく、無自覚フェミニストときている。
しかも二十七歳、独身。
女性社員に人気が出ないわけがない。
唯一の条件ではあるが、グループの飲み会にも滅多に参加しない、仕事はできるがどこか俗世離れした雰囲気を持つ彼を秘書課の美人目的で誘うのは気が引け、無理にとは言わない、と同僚は低姿勢でいる。
「光栄な話だが、俺は酒が……」
断ろうとした式は、はたと口を閉ざした。
自分が変わらなければいつまで経っても状況は改善されない。
変わらなければ。
呪いのようにこの身を制する束縛から抜け出さないと。
整然と緑が生い茂る広い公園を眼下に、式は、自由を勝ち取るためやたら神妙に頷いてみせた。
「そんな下世話な集まり、お前に相応しくない、式」
夕暮れが宵へと移り変わる時間帯だった。
ゆっくりと満ちていく薄闇に煌々と瞬き始めた街並み。
ヘッドライトに満ち溢れる交差点を前に、ずらりと並ぶ通行人の列に身を投じた彼。
羽織ったパーカーのフードを目深にかぶってスマホを眼下に掲げていた。
ハードコア系の洋楽を大音量にしたイヤホンを耳にはめて、信号を待つ人々の中で頭一つ分飛び出した長身、覗いた口元は不敵な笑みを刻んでいた。
「明日の七時から、か」
その頃、同僚から届いたメールで日時と場所を確認した式は引き出しにスマホを仕舞い、残業なるデスクワークを再開した……。
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