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love me kill me-2
「迎えにきたよ、式」
女子サイドが決めた和洋風居酒屋の個室。
開始間もなくして一杯目のファジーネーブルで酔い潰れかけていた式の元へ彼は迷わずやってきた。
何の呼びかけもなしに仕切りの戸が開かれたかと思えば、明らかに店員ではない彼が現れ、式以外の全員が呆気にとられていた。
フードつきパーカーの下には制服。
一見して染めたとわかる髪に鋭い双眸、一切物怖じしていないことが伝わってくる、その不敵なオーラ。
年下の男子高校生にぐっと怯んでいる男性陣、驚きつつも興味津々な女性陣を華麗に無視して。
彼はテーブルに頬杖を突いて寝とぼけている式の隣へすっと身を寄せた。
「帰ろう、兄さん」
「……隹? ど、して……ここが?」
「兄はアルコールが一切駄目なので。今後こういった飲み会には金輪際誘わないで頂けますか」
不敵な笑顔を座に一つ残し、式の弟である隹は兄を支えてその場を速やかに後にした。
どうして弟は現在一人暮らし中であり飲み会のことを黙っていた兄の居場所がわかったのか。
何故ならば携帯にウィルスを仕込んでいるから。
情報が筒抜けであることに式はまるで気づいていない。
隹は自らつくり上げた遠隔操作ウィルス「ビースト」を飼い慣らし、兄の懐に棲息させ、常に監視している……。
「や、め……隹……っ」
「式。俺に隠れてコソコソするんじゃねぇよ」
「ど、して、いつも……っなんでっ……どうしてっ……」
そこは式の自宅マンションだった。
三人掛けのソファに無理矢理組み敷いた兄の切実なる問いかけに弟は無駄に優しげな声色で答える。
「俺は兄さんのことなら何でも手に取るようにわかる」
恐ろしいくらいに兄を溺愛する弟。
体も心も食い尽くしたいくらいに。
抵抗も拒絶も造作なく捻じ伏せて。
「あんなしょうもねぇ女や性欲抱えたクソ男どもに無防備なツラ見せやがって」
酔いがすっかり引いた式は嘲笑と共に悪態をつく隹を睨んだ。
「睨みたいのは俺の方だ」
「もうこんなことやめてくれ……」
「誰かとセックスするつもりだったのかよ」
「隹ッ」
「勝手なことする嘘つきにはお仕置き必須だな」
「ッ……俺は……嘘なんか……」
ああ、綺麗な式。
怒っても、悲しんでも、絶望しても、いつだって綺麗だ。
式に宿る数億の欠片、その一つだって逃がさない。
誰にも分けない。
式のものは俺のもの。
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