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love me kill me-3
式は痛いくらい仰け反った。
「だ、め……っもぉ……ッッ」
スーツを脱がせてもらえずにネクタイも締めたまま式は股間に顔を埋めた隹の唇奥に向けて射精した。
さらに兄のペニスを深く咥え込んだ隹。
まるで二つの膨らみから奪うように激しく吸い上げる。
管に引っ掛かった分まで執拗に吸い出す。
「や……ッッッ」
痛いくらいの口淫に式の切れ長な双眸は涙を溜めた。
床に跪いた隹の唇に捕らわれたまま下半身をぞくぞく戦慄させる。
「……あ……?」
一向に離れようとしない隹。
まるで次を強請るように精液を弾いたばかりの尿道口を凶器じみた舌先で突いてくる。
「ッ……待っ、嫌だ、隹……ッ」
突くどころか。
細めた舌尖を強引に捻じ込んできた。
思いも寄らなかった責苦に式はぼろりと涙した。
隹の髪をきつく握りしめ、何とか引き離そうと試みた。
拒もうとしてくる式に隹は。
射精したばかりでひどく過敏と化したペニスに浅く歯を立てた。
脈打つ兄を愛しげに甘噛みした。
「切断してホルマリン保管。そうすればメスだって興味なくすよな」
半ば冗談ではない本音に怯えて凍りつく式に愉悦が止まらない。
恐怖と快楽で愛しい兄をコントロールしていく。
どれだけ徒労と絶望に塗れようと綺麗な式のさらなる虜と化す。
「また、こんな……っやだ……やだ、隹……っも、いかせないで……っいきたくなぃ……っ」
式は九歳も年の離れた隹に哀願した。
哀願しながら……達した。
捕らえて自由にしてくれない弟の唇奥で息絶えるように果てた。
隹は二度目の吐精も残さず平らげる。
舌の上で苦しげに跳ねるペニスを唾液で温め、甲斐甲斐しく舐め尽くしてやる。
「ッ、ッ……す、い……ッ」
いつも整然と身に纏っているスーツがこれみよがしに乱れていく……。
「動けよ、式」
「嫌……やだ……」
「動けって」
「ああッ……そんな、いきなり強く……」
「動け」
ソファに座った隹と向かい合った式は彼の膝上に跨っていた。
制服にパーカーを羽織ったままの弟、一方、式が身に纏うのはワイシャツにネクタイ、靴下のみ。
曝された双丘がぎこちなく揺らめく。
腰が雑な円を描く。
「ン……っ」
こどもみたいにぎゅっと眉根を寄せ、濡れた唇を弱々しげに震わせて腰を回す式に至近距離から釘付けになっていた隹は。
一息にワイシャツを捲り上げて胸元まで外気に露出させた。
うっすら汗をかいて艶めいていた乳首をじっくり苛んだ。
「ぁ、ん……っ」
刺激を浴びて淫らに芽吹いていく突起を舐め吸いしつつ、腰に両手を添え、律動を補佐してやる。
時に真下から小刻みにピストンして熱く潤う尻膣奥を丹念に掻き回してやる。
「あ……ッあ……ッあ……ン」
じっとり汗ばむ肌にはりついた癖のない髪。
睫毛まで満遍なく湿って虚ろに煌めく。
「式」
隹は我慢する必要もないといった風に好きなように動き出した。
やっとペースを掴み始めていた式に自分のリズムを強制した。
滑々した双丘に筋張った五指を喰い込ませて乱暴に突き貫く。
肉と肉が狂おしくせめぎ合うナカで勃起しきったペニスをしごかせる。
腕の中で崩れ落ちそうになっている式を支えて体勢を保ち、凶暴な本能と共謀し、その後孔を好きなだけ貫き続けた。
「は…………ッッッ」
首筋を伝う汗、次から次に頬へ溢れる涙も、逃がさない。
一つずつ丁寧に根こそぎ奪った……。
休日の昼下がり。
照明が控え目でクラシックが緩やかに流れるお気に入りの喫茶店で式は新刊を片手にコーヒーを飲んでいた。
数時間ほど長居して外に出れば、店内の明るさに馴染んでいた切れ長な双眸は白昼の日差しにほんの一瞬怯んで、ピアノソナタが溶け込んでいた橙の明かりを恋しがった。
だからと言って店に戻るわけにもいかずに日陰を選んで行先も考えずに歩く。
穏やかな空、吹く風は心地いい。
歩き慣れた道から裏通りに逸れ、視界に馴染みのない街角に沿って当てもなく進む。
足元のみ白い黒猫が目に止まり、近寄ってみれば、人懐っこそうな鳴き声を上げて式の足元に擦り寄ってきた。
その場にしゃがみ込んで優しく撫でてみれば喉を鳴らす。
撫でるのをやめ、式がすっと身を起こせば、黒猫は軽やかな足取りで傍らを通り過ぎて行って。
次は隹の足にじゃれついた。
「俺が式の弟だってわかったのかな」
喫茶店に入る前から背後をついてきていた、喫茶店ではカウンターに着いて携帯を眺めていた弟に、式は「そうかもな」と答えた。
「お前、俺の弟になれよ」
慣れた手つきで黒猫を抱き上げ、しなやかな肢体をあやしている、いつものパーカーを羽織った隹。
「ずっと背後にいられたら気分が悪い」
「いつものことだろ。なぁ?」
「にゃあ」
「……後ばかりついてこないで並んで歩いたらどうだ」
式はそれだけ告げると歩行を再開した。
「兄さん」
「ッ……誰が手を繋ごうなんて言った」
「昔はよく繋いで歩いたのにな」
「……昔と今を一緒にするな」
舗道の端に丁重に下ろされた黒猫は澄んだ双眸で弟に寄り添われる兄を見送った。
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