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禁断症状末期双子-2
発情期が過ぎ去れば何事もなかったかのように式は日常に帰還する。
「宿題、いっぱい溜まっちゃったね」
しかし隹は。
雑木林のそばに佇むあの別荘に置き去りにされているような心地がしてならない。
「隹もそうでしょ? 俺、自分の分が済んだら手伝うね」
そんなにすぐ忘れられるもんなのか。
一日中俺とセックスしていたくせに。
「……隹?」
「お前ずるいな、式」
父親のいない夜だった。
キッチンで食後のコーヒーをいれようとしていた式は、後ろから隹に抱きしめられて、その切れ長な双眸を俄かに見張らせた。
「どうかした……あ」
ゴリ、と服越しに股間を押しつけられ、硬く膨らみ切った感触が双丘に擦れて式は赤面する。
「ど、どうして、いきなりこんな」
「どうして?」
制服を着たままの隹はパジャマに着替えた式の濡れた髪に頬擦りした。
「別荘のことが頭から離れねぇんだよ」
「隹」
「式は? 兄貴は? 一瞬だって思い出さねぇの?」
「……あの間の俺は俺じゃないから」
甘い香りのする髪に鼻先を沈めていた隹は薄目がちながらも鋭い眼光を保ったまま低く笑った。
「俺は俺だった。別荘での俺も、今の俺も、ずっと同じ。取り憑かれてなんかいねぇ」
パジャマの内側へ入りたそうにしている隹の両手から式は逃れようとした。
すると急に体の向きを変えられて。
睨むように自分を見つめて笑っている隹と視線が重なった。
「最初に誘ったのは兄貴だろ」
「だから、それは」
「自分じゃねぇ?」
ぐ、と隹の膝が両足の間に割って入ってきたかと思うと股間を擦り上げられた。
「ッ隹、やめ、やめて」
「思い出せよ」
「嫌だっ、あんなの俺じゃない」
「お前だろ」
強張る式を正面から抱きしめた隹はその耳元で意地悪に囁きかけた。
「自分からゴム渡して、俺にペニス突っ込まれて堪らなさそうに喘いで、朝昼夜見境なく盛ってたのはお前だよ、式、ほら、ここに」
片方の尻たぶを片手で鷲掴みにし、片方の手の指先を尻の狭間に滑り込ませる。
「俺の感触残ってんだろ……?」
嫌だ。
あの忌まわしい期間を脱したばかりなのに。
「まだ欲しくてヒクついてんじゃねぇの」
どうしてこんなに疼くんだろう。
「……すげぇ、今日の式のナカ……」
蕩けそうなくらい浮かれた声が寝室の薄闇に落ちた。
「あ……あ……あ……あ……」
抉じ開けられた両足を、パジャマの下に覗く腹を、なだらかな喉骨をずっと震わせている式。
薄い隔たりのない生の感触に滾りきった雄膣。
ほぼ強引に押し込まれた肉塊が搾り上げられるような締めつけを直に浴びてあからさまに怒張している。
「ぬ、抜いて、隹、お願い、お願いだから……」
涙ながらに哀願してくる式を見下ろして隹は自身の唇を舐め上げた。
「うまそう」
今までで一番。
何一つ残さず平らげて自分のものにしたい。
「隹、ダメ、やめ、」
無情にも雄膣奥で開始された律動。
逞しく成長したペニスの括れ、熱、硬さや太さが勢いよく刻みつけられる。
式は痛々しげに胸を反らして首を左右に振った。
片割れの隹にペニスを打ちつけられて悦びを見出す我が身に、その先を欲する本望に向けて。
「好きなんだよ、兄貴」
そんなこと知ってた。
だから、あの別荘で、隹をそばにおくことが隹にとってどれだけの苦痛に値するかもわかっていた。
それでも隹をそばにおいた。
隹を誘った。
「俺も……好きだよ、隹……だけど……」
「……誰かに犯されたって言えよ」
「ッ……隹、待っ、ほんとにっ、あっ、あっ、んっ、あ……!!」
「……孕んで、兄貴」
のしかかってきた隹に獣じみた腰遣いで雄膣を突き尽くされて式は目の前にある裸の肩に爪を立てた。
やがて最奥に一思いに迸らせた隹。
初めて雄膣に注ぎ込まれ、その絶頂をひしひしと感じとり、分かち合った式。
双子の片割れに禁断の種をしっかり植えつけられていく。
「式……俺とお前はずっと一緒だからな」
次に向けてもう動き出そうとしている隹に囁かれて式は半開きの双眸で鋭い眼を見つめた。
「……うん……ずっと……隹と一緒にいる」
俺と隹は双子。
これ以上の絆なんてないと思っていたけれど。
俺達、もっと深い繋がりで結ばれるね。
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