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酒は飲んでも呑まれるなかれ/敵幹部×捕虜

■その夜はいつにもまして凍てついていた。 「お前、酒乱だったんだな」 「しゅらん…?」 「敵に弄られて勃起する淫乱イカレ野郎って事だ」 捕虜の痴態に中てられて目が眩んでいる俺も相当イカレているがな。 「暖まるかと思って持ってきたの」 彼女の親切心を無下にはできないと思ったのが式のミスだった。 その夜は殊更冷え込みが厳しかった。 地下室で吐く息は白く、ブランケット一枚ではとてもじゃないがやり過ごせそうにない。 捕虜の式はもう今晩は眠るまいと決めた。 体力の回復に睡眠は欠かせないがこれだと風邪を引いてしまう。 体温低下をできる限り留めようと、壁際で両足を抱いて頑なに縮こまっていた。 ふと夜更けには珍しい足音がドア越しに聞こえてきた。 耳を澄ませて足音の持ち主を瞬時に察すると、警戒を解いて式は彼女を出迎えた。 「どうした、セラ」 極寒の大地を祖国とする侵略者達はこの土地の冷気など気にもならないらしい。 やたら露出度が高い薄着にレザージャケットを羽織っただけの、敵対組織における紅一点のセラが地下室に入ってきた。 「ああ、やっぱり。そんなに凍えて」 壁際で座り込んでいる式の姿を目にし、セラは気の毒そうな表情を浮かべて彼へと歩み寄った。 どうにも捕虜でありながら紳士的振舞を崩さない、ストイックで、端整な顔立ちの式にセラは好意を抱いているようだ。 気に食わない上官の目を盗んでは、こうして度々地下室にやってくる。 「ねぇ、これを飲んで。暖まるかと思って持ってきたの」 「それは……」 「お酒よ、式」 後ろ手に持っていた酒瓶を差し出してきたセラに式は正直戸惑った。 捕虜に飲酒を勧めるなど言語道断だろう。 そもそも酒は飲まない。 兵士たるものには至極不要、敢えて自ら絶っていた。 「今夜は冷えるでしょう? 私は平気だけど貴方は地下室だし、きっと寒がってるかと思って。ハイ、どうぞ」 セラの笑顔を前にし、式は「不要だ」ときっぱり断るのも気が引けて、とりあえず酒瓶を手に取ってみた……。 「繭亡、酒をくれ」 いつになく凍てついた夜。 古傷を刺激されて寝つけない隹は自分と同じ部隊長クラスである繭亡の元を訪れたが「私の分は妹のセラに与えた」と冷然と突っ返され、気に食わない部下をアジト中探し回り、虫の居所が悪く何人かの下級兵士をぶっ飛ばし、まさかあの馬鹿はまた地下室の捕虜と密会しているのかと、青水晶の双眸に不快を露にしてそちらへ足を向けたところ。 「……うげ、隹少佐」 案の定、地下室にいた部下のセラ中尉に外の見張りを言いつけて追っ払い、念願の酒を手に入れた。 「たく、あの露出狂女、半分も飲みやがって」 酒瓶を手にし、自分も即座に地下室を後にしようとしたのだが、視界の端にあるものが引っ掛かって足を止めた。 「……うう」 捕虜の式が床に蹲っていた。 日中、えげつない拷問にかけられて倒れている様子とはまた少し違っていて、人の苦しむ姿が嫌いじゃない隹は後ろ髪を引かれて彼の傍らへ近寄ってみた。 「何だ、式。風邪でも引いたか」 ブーツの先で頭を小突く。 力任せに蹴っ飛ばせば首の骨が折れて簡単に死ぬだろう、それだと後々面倒になるので、隹は加減してブーツの底で式の頭を揺さぶった。 「……」 普段ならば嫌味な程に凛々しい切れ長な眼が容赦なく睨みつけてくる。 だが式は蹲ったままで何の反応も示さない。 面白くない隹は、今度は式の腹部に足を差し入れて無造作に彼を引っ繰り返した。 自分の視界に曝されたその表情に彼は珍しく目を見張らせた。 「な……なにする、バカ……」 式は完全に酔っ払っていた。 冴え冴えとした顔つきは酒のせいで赤みが差してとろんとなり、口元は緩んで、凛々しかった双眸は妙に潤んでふやけた視線を泳がせていた。 「あの馬鹿女は捕虜に酒を飲ませたのか」 半分に減った酒瓶を見、また式に視線を戻し、隹はあまりにも普段の様子からはかけ離れた泥酔状態の捕虜を繁々と観察した。 草臥れた黒い襟シャツの狭間から覗く肌までもが仄赤く染まっている。 首筋や鎖骨、腹部など、しっとり汗ばんでいるようだった。 「おまえの足……おも……おもい……」 腹に乗せたままになっている隹の足を式がえいえい退かそうとしている。 緩々な拳を握った両手でぽかぽか叩かれても痛くも痒くもない。 隹は戯れにブーツの先で捲れていた式のシャツを更に上へと捲り上げた。 「すずしい……」 自分と比べれば劣るが、まぁなかなか鍛えられた腹筋だった。 力を加減してブーツでなぞってみれば式はクスクス笑った。 「くすぐったい……」 こいつがこんな風に笑うとは。 俺の言動一つ一つに眉根を寄せて蔑みの眼差しを寄越してきた奴と同一人物とは思えないな。 シャツは胸の突端に引っ掛かっていて見えそうで見えない二つの突起。 隹は、また戯れに、次は股座へと足を移動させた。 「いた、い」 布地越しに軽く力を入れて靴底で弄る。 式は大した抵抗をするでもなく、ちょっと身を捩じらただけで、潤んだ眼で隹を見上げてきた。 「きもちいい……」 「踏まれて気持ちいいのか、お前」 「……もっと……踏んで……?」 陶然とした眼差しが色香を含んで見え、無防備な肢体に煽られて。 隹は式を何となく滅茶苦茶にしたくなってみた。 その場に座り込み、ブーツではなく自分の手でさり気なく割れた腹筋をなぞり、そのまま服越しに下肢へと侵攻する。 「はぁ……」 あろう事か式は靴底による愛撫で発情したらしい。 掌に硬さを帯びた感触が伝わってくる。 かたちを確かめるように押し包むと熱をもった悩ましげな吐息が洩れた。 「お前、酒乱だったんだな」 「しゅらん……?」 「敵に弄られて勃起する淫乱イカレ野郎って事だ」 捕虜の痴態に中てられて目が眩んでいる俺も相当イカレているがな。 隹は服越しに下肢を擦りながらシャツをたくし上げ、式の胸元を外気に露出させた。 程よく発達した胸板を揉みしだくと真下の捕虜は小さな声を上げた。 「痛いか」 掌の中心で突起を押し潰す。 下肢と同様硬くなりつつある尖りは色味も増して、吸いつけば唇の狭間でその感触はより際立った。 「きもちい……あ……隹……」 こんな声で名を呼ばれる日が来るとは。 なかなか悪くないな。 「……ん……ふ」 隹は式に完全に覆い被さると欲望のまま口づけた。 捕虜だとか、男だとか、そんな事はどうでもよかった。 今、頭の中にあるのはこいつを性的に滅茶苦茶にしたいという単純明晰な欲求のみ。 逡巡を嫌う隹はそんな己に従うだけだ。 唾液を絡ませた舌先で熱い息を直に貪る。 わざとらしく立てた粘着質の水音が耳に心地いい。 口づけの合間に零れる式の呻吟する声音も。 「酒乱で淫乱の男はどんな手管が好みか、探ってみるか」

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