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酒は飲んでも呑まれるなかれ-2

脱力しかけている式の両足の間に割って入り、服越しに下肢を重ねた。 勢いよく摩擦すれば上擦っていた声が喘ぎに変わる。 クソ、堪らないな、この変貌ぶりは。 癖になりそうだ。 「直にいくぞ、式」 屹立した式の隆起を取り出し、速やかに欲望を宿した己の熱源も取り出し、隹はそれを始めた。 「あ……おまえのと……こすれてる……」 「悪くないだろ?」 互いの隆起を濃密に擦り合わせる。 次第に先走りが絡み、それが潤滑剤となって滑りがよくなり、速度が増した。 「これで一回イッておくか、なぁ?」 「うん……いく……隹といっしょに……」 一緒にイクとか、俺のオンナか、お前は。 間もなくして隹は不本意ながらも先に達し、間髪入れずに式の隆起を扱き立てて彼をやや強引に放精へと追い立てた。 「あ……っ、は……っ」 式は隹の真下で全身を痙攣させて白濁を弾いた。 吐き出されたその量、濃度は彼の抑制されていた日々の長さを物語る。 一度達しても尚、握り込んだ手を緩々と動かせば先端からは白濁が貪欲に溢れ出た。 「お前、いつから禁欲生活を過ごしていたんだ?」 上体を起こし、近くに置いていた酒瓶を手に取り、隹は酒を口に含んだ。 そしてまだ呼吸が落ち着いていない式を無造作に抱き起こすと透かさず唇を奪った。 舌伝いに酒を流し込む。 殆どが唇の端へと零れて肌へと流れ落ちていった。 「ん……ふぁ」 濡れた口内を舌先で隈なく蹂躙し終えると流れ落ちた酒の跡を辿った。 首筋からはだけた胸元、執拗に突起を舐め解し、犬歯で刺激したりもした。 「や……っ……いたい」 「痛いのがイイんだろう?」 隹も一度の達成で収めるつもりはなかった。 残りの酒を飲み干して久方ぶりの欲望に加速をつけ、依然として潤んだ眼で異様に己を煽る式へとより深く重なった。 「いいか、式」 問いかけても返事は来ない。 彼は今、途切れがちな嬌声を上げるばかりで隹の声を意識に拾い上げる余裕など皆無に等しかった。 隹は先程から見栄えのいい後ろ姿を見下ろしながら式を揺さぶっていた。 「あっ……あっ……あっ」 ミリタリージャケットを羽織ったままの隹は下肢の前だけ寛げ、シャツだけを纏う式の腰を支え、欲深な律動を愉しんでいた。 すでに正常位で繋がった後であり、最初は狭苦しかった肉の内も敵幹部の昂りを覚え込まされ、激しい行き来を然程苦としなくなっていた。 小刻みなピストンをおもむろに中断し、三、四回奥深くをじっくりと貫くように突き上げてやれば、四肢を震わせて更に甘い声を放つ。 よく引き締まった双丘を鷲掴みにしたり撫で擦ったりすると、自らも深く交わるように腰をくねらせるという不埒な真似にまで至った。 「もっと……」 肩越しに濡れた双眸が隹を物欲しげに仰ぎ見る。 隹は唇の片端を不敵に吊り上げて、尋ねた。 「これが欲しいか、式」 先端が抜けるか抜けないか、ギリギリまで昂りをゆっくりと引き抜く。 そうして腰を掴みなおすとまた一息に最奥へ突き入れる。 途端に式は甲高い声音を迸らせて床に這いつくばった。 震える背に覆い被さった隹は式の正面へと手を回し、濡れそぼった隆起を探り当てると、そっと握り締めた。 「ぁ……ン」 「すごいな、式……女より濡らして」 上下に扱くと中が痛い程に締まった。 ああ、こいつの中に出したい。 子宮などないし子種を注いだってまるで無意味だが、出したくて堪らない。 俺の欠片で式を満たしたい。 「出していいか」 隹の問いかけに式は病人じみた仕草で頷いた。 意味がわかっているのか定かではないが、首を左右に振られたって隹は自分の欲求を突き通すつもりでいたから、問いかけ自体にあまり意味はなかった。 絶頂を求め著しく速度を上げて突き上げ、隹の昂りも同様の速さで扱き立てる。 「ひぁ……っ」 今度は先に式が達した。 一際、中がきつく締まり、搾り取られるような感覚に隹は一瞬低い息を洩らし、より奥へ勢いよく昂りを打ちつけた。 そのまま式の最奥へ傲慢に精を放つ。 その間も手の動きは休めずに、出し尽くすように、彼の隆起を執拗に愛撫した。 「あ……あ……あ……」 身の内へ溢れ出る感覚に式は虚脱寸前となって喘いだ。 肉の狭間で打ち震える隹の隆起が何よりも近くに感じられる。 最後の一滴まで注ごうと何度か腰を獣の如く猛然と振り立てられ、あまりにも際どい欲望の熱に肢体を火照らせて声を詰まらせた。 「ん……あ……っ」 「お前の中に出した……女だったら孕んでる……」 隹は低い笑い声を立てた。 息も絶え絶えの式の首筋に噛みつくようなキスをし、彼は、囁きかける。 「もしお前が女だったら。生れ落ちる俺とお前の子はどんな風だったろうな」 凄まじい悪夢に飛び起きた瞬間、ひどい頭痛に貫かれて式は思わず静止した。 「う……何だ、これは……」 とてつもなく気分が悪い。 悶々とする式は気だるそうに身を起こした。 肢体が疎ましい重みを持て余しており、腰の辺りにも鈍痛が生じている。 これまでに覚えのない感覚に式は戸惑うばかりでしばらく身動きできずにいた。 風邪とは違うな……それにしてもこの腰のだるさは一体……そういえば昨夜はセラが来て……それから……。 それからの記憶が……ない。 「……」 床に転がる空き瓶を見つけた式はつい先程まで我が身を蝕んでいた悪夢を思い出した。 ……女になった俺が隹の子供を産み育てていた……ああ、悪夢以外の何物でもない、胸糞悪い、ぞっとする。 まぁ、意外と可愛い子供だった気もするが……。 「……クソ、どうかしてる」 二日酔いという強烈な打撃と、散々耳元に吹き込まれた隹の悪戯な囁きが招いた悪夢に、成す術もなく悶々とするばかりの式であった。 「おい、貴様の酒を寄越せ」 今宵、愛しの捕虜と垣間見る酔狂な夢を求めてアジト内を徘徊する隹であった。

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