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バンパイア・ダーリン-4

これは交換条件。 「慣れてきたか、式」 先生から血をもらう代わりに、おれは。 「指なら奥まで呑み込めるようになったな」 先生におれをあげる。 「や……っめ……それ以上……っ」 カーテンは閉ざされて夕方前の明るい日の光を拒んだリビング。 ソファに深く腰かけた隹を跨いで向かい合い、膝立ちになっていた式は、仰け反った。 ベルトを外されて緩められた制服ズボン。 下着の内側に入り込んだ隹の両手。 長く筋張った中指が後孔を残酷に抉じ開け、奥へ進み、仮膣をゆっくり掻き回してくる。 「感じるようになったか」 嫌だ、怖い、帰りたい。 前の自分に戻りたい。 呪いにも似た発作を知らなかったあの頃へ。 「隹先生……っ、ゃ、ぁ……っ……」 呪いにも似た発作を我が身でもって受け止めて癒やしている教師は嘆く生徒を嬉々として平らげる。 「感じるか、式」 欲深い肉杭で貫く。 弱々しげな抵抗を傲然と捻じ伏せ、突いて、蝕んで、突いて、支配して、突いて、独占する。 「ぁっ、っ、ぅっ、んっ、ぅっ……ぁっ……」 自分の真下で止め処なく涙を溢れさせて全身を紅潮させた式にどこまでも見惚れる。 「綺麗だな」 式は心臓を波打たせた。 先月に純潔を奪われたばかりで未だ柔な後孔を奥まで虐げられ、両手首を力任せにソファに縫いつけられて、涙でぼやける隹を震えながら見上げた。 「……おれなんか、きれいじゃない……」 隹は笑った。 脱ぐ手間も惜しく、着たままでいたワイシャツを第二ボタンまで乱暴に外して首筋を無防備にすると、さらに上体を倒した。 「ほら、麻酔の時間だ」 式は泣き止んだ。 たった今まで全力で握り締められていた、血肉の疼く両腕を伸ばして律動を続ける隹の肩に辿り着くと、目を瞑った。 教師の首筋に突き立てられた生徒の小さな乱杭歯。 カーテンの向こうでは夕闇が緩やかに地上に満ち始めていた。 「今日は泊まっていくか」 蔑ろにされた制服に埋もれるようにソファに横たわっていた式は掠れた声で「……絶対に嫌です……」と回答した。 華奢な骨組みの肢体を抱きしめていた隹は拒む生徒に命じる。 「泊まっていけ、式。家には俺から連絡しておく」 「……」 「汗、ひどいな。シャワーを使うといい。タオルと着替えは後から持っていく」 おれに決定権はないから。 足掻いても無駄なだけだから。 隹先生の言いなりになるしか。 五月半ば、あの日の放課後を迎えるまで。 式に顕著に見られた顔色の悪さに家族も当然心配していた、しかし本人に尋ねても教室のときと同じく「大丈夫」の一点張り、気に病んだ母親は学校へ問い合わせようか迷っていた。 隹の血を得て帰宅した我が子の蒼白だった肌色は一日で元通りに。 むしろ前よりも瑞々しく艶めいて見えた。 態度こそ多少ぎこちなくはあったが、一安心した母親は何か嬉しいことでもあったのかと尋ねてみた、もちろん、本当のことを言えるわけがない式は苦し紛れにこう述べた。 『隹先生が話を聞いてくれて……』 この一件で母親は担任の隹を過信した。 隹のおかげで我が子がひっそり抱えていた問題が解決したのだろうと理解し、後日感謝の電話まで寄越してきた。 「突然のことで誠に申し訳ありません、明日の午前中にはご自宅まで送ろうと思います」 案の定、担任の申し出を母親は快諾した。 「落ち着ける場所で彼の話をゆっくり聞いて、今後どうしたいか、本人の納得できる解決策を見出せれば……」 薄暗いリビングで電話をかけていた最中にシャワーを浴び終えた式が浴室からおずおずと戻ってきた。 濡れた頭にバスタオルを引っ掛け、まるでサイズの合っていない長袖シャツを腕捲りし、制服および下着は洗濯器に放り込まれていたため下には何も履かず、裸足でフロアをぺたぺた鳴らして。 電話が終われば、壁際に立ったまま「おれのこと、お母さんにはどう伝わってるんですか」と伏し目がちに尋ねてきた。 「多感な時期によく見られる情緒不安定の渦に囚われて感受性を持て余し、逃げ道を模索している繊細な生徒」 まだ乱れたワイシャツにスラックスを身につけたままの隹は首筋を押さえ、立ち上がった。 「……先生、首、痛むんですか?」 「別に、痒いだけだ、蚊に刺されたみたいに」 「……」 「本当にいい両親を持ったな、あれだけ理解ある保護者は五年間の教師生活においても稀だ」 壁際に佇む式の元へ隹はやってきた。 逃げ場に迷った式は、観念して項垂れると、首を左右に振った。 「意外だな、お前にも反抗期があるのか」 濡れそぼった髪の先から不規則に落ちる雫。 前屈みになり、顎を掴んで持ち上げれば、いつになく物憂げに翳る切れ長な双眸と視線が重なった。 「おいで」 「シャワー……っ浴びたのに……これじゃぁ、意味、なぃ……っ」 寝室へ持ち運ばれた式は床に両膝を突き、ベッドにしがみついて、背中に密着する全裸の隹に切なげに文句をぶつけた。 自分のシャツを持て余す華奢な体に改めて欲情した隹は熱せられた式のうなじ付近で密かに笑った。 特別な生徒の仮膣を欲深な肉杭で幾度となく突き上げて所有の痕を重ねる。 衰えることのない肉圧を再三味わう。 ブカブカなシャツを羽織ったままの肌身を隈なく愛撫した、裾が捲れて露になった小振りの尻丘も、微痙攣する太腿も、ピクピクと悶えていた熱源に至っては一段と細やかに両手で撫で回した。 「んっ、んっ、っ……せんせ、ぃ……っ」 「感じるか?」 「っ……やだ……こんなこと、きらい……」 「強情だな」 シーツをぎゅっと掴んで、律動に忠実に肢体を揺らめかせ、色鮮やかな唇を弛緩させている式に隹は延々と腹底を滾らせる。 『おれは養子なんです』 先程聞かされた真実に少し意識が逸れた。 『おれは施設で育ちました。本当の両親のことは何も知りません』 式の本当の両親。 彼らも息子と同じように血への渇望を抱いているのか。 乱杭歯の疼きを嘆きながらどこかの街を彷徨っているのか。 「っ……隹せんせい……」 隹は戯れに式の首筋に噛みついた。 ひどく滑らかで柔らかな皮膚に痕を刻みつけた。 「や、だ……痛い……くるし……」 「もっと痛くして苦しめてやろうか、式」 「っ……隹先生なんか、嫌い……好きじゃない……」 「お前のためなら干乾びてやってもいいと思ってるのに」 「ッ……ッ……うそつき……それに、おれ、そんなこと……しなぃ……ぜったい……隹せんせい、なんか、好きにならない……」 この綺麗な吸血鬼を懐に閉じ込めていられるのなら俺の血などいくらでも。

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