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Tears of butterfly/男×囚われの彼

その蝶の色鮮やかさに男は目を奪われた。 細く開かれていた浴室の窓から、それはまるで運命付けられていたかのように男の視界を訪れたのだ。 広い浴室の中をふわりと舞い、驚く事に、浴槽の縁に腰掛けていた男の手の上に蝶はとまった。 男は掌の間に蝶を閉じ込めてみた。 微かな隙間を空けて窺うと蝶は静かに翅を動かしており、錯乱している様子はない。 実に穏やかな休息を得たようにさえ感じられる落ち着きぶりを見せていた。 「どうするんだ」 男は浴槽の中で生温い湯に沈む彼を見やった。 「どうもしないさ」 男は彼にそう言った。 そして閉ざしていた手を広げる。 すると蝶はまたふわりと舞い上がり、今度は彼の髪にとまって両の翅を休めた。 「お前はあいつを愛しているんだな」 彼は返事をしなかった。 ふと舞い上がった蝶が浴室の中を飛び回るのを切れ長な眼で追い、その行方を見守っていた。 「だが、お前はもうあいつのそばには行けない」 彼の双眸が俄かに揺らいだ。 蝶の翅が忙しなく動く。 出口を忘れて、今はただ闇雲に飛ぶばかりで、哀れなまでに焦燥している。 彼の双眸から頬へ一筋の涙が伝った。 出口を見つけ出し、外へと飛び立っていった蝶にも気づかずに、彼はそこで美しく凍りついていた。 とても綺麗なものを見つけた気分で、男は手を差し伸べて彼の頬に触れる。 「お前は俺の元に留まって、好きなだけ温い幸せに浸かっていればいい」 逃げ場所を塞いで檻の中に閉じ込めて、出口を忘れさせ、そこに自由が宿っていると思わせておいて。 お前の心も頑丈な有刺鉄線で縛り込もう。 「俺はお前の主人であり、奴隷だ」 濡れた瞳のそばに口づけて、男は、彼に誓った。 「何もかもお前の成すがままに」  

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