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Cage/工作員×工作員
俺と奴は女の趣味がよくかぶる。
だから俺達は同じベッドの上で女を分かち合うことがある。
だが、嫌がらずに受け入れてくれた相手は大概一夜も持たずに失神し、そのまま眠り込んでしまう。
そんな時、俺と奴は。
「お前が無茶をするからだ」
襟シャツを羽織ったままの式がベッドの真ん中で汗をかいて眠る女を見下ろして、言う。
女を挟んでその隣に寝そべる俺は失笑した。
「おかげでイキ足りない」
上官、部下からも褒め称えられる有能な奴が淡々とした口振りでそんな台詞を吐く。
墨で縁取られたような切れのある眦には先程の情事の余韻が残っていて、仄赤く染まっていた。
奴と同意見の俺は短い髪をかき上げて、ソファがあるベッドルームの隣室を立てた親指で指し示した。
「あっちに移るか」
普段、俺は奴にキスしたいなんて思わない。
いくら見てくれが良くても、男だし、昔からの知り合いだから、有り得ない。
照り輝く太陽の元で同じ訓練を受けたというのに日焼けの跡など皆無な、その白い肌も好ましくなかった。
綺麗な顔だとは思う。
が、それとこれとはやはり別の話だ。
体を重ね、蒼白だった肌が上気して隈なく汗ばみ、熱に満ちると、どうしようもなく、したくなったりもするが。
「ン……ぁッ」
白い布張りのソファの上で、奴を下にして、放埓な快楽を共有する。
たった今まで華奢な骨組みの黒髪の女を悦ばせていた互いのモノを擦り合わせて、激しく動かし、先走りを溶け合わせる。
伸ばした舌先は唇の外で絡ませた。
露骨な水音をふんだんに滴らせ、どちらともなく蔑む笑みでもって、延々とふしだらを続ける。
軍部が擁する裏組織に籍を置き、正当な理由のつけられた殺人を日々繰り返していると、当然色々なものが麻痺してくる。
中でも性欲は、並大抵の事では満たされなくなった。
だから俺と奴はこんなふしだらを繰り返す。
「……もう来てくれ、隹……」
自ら俺の腰に両足を絡ませて奴が催促してくる。
俺は忠実な奴隷みたいに従ってやる。
完全に勃ち上がった己の根元を掴み、奴の肉の狭間へと落としていく。
頬に髪を張りつかせて奴は身悶えた。
「あ……ぁ、ッ……あ……」
挿入は大して苦でなく、一気に奥まで突き入れると、その腹筋が戦慄いた。
すでに零れ出た先走りで濡れ、屹立した性器の先が引き締まった腹部をさらに湿らせようとしている。
もう一度、奥深くを力一杯突くと、喉を反らせて式は微かな悲鳴を上げた。
「まだイクなよ」
上半身を前に倒し、戯れに奴の右手首を肘掛にきつく押しつけて傲然と攻め立てる。
俺の動きに合わせて奴は器用に腰をくねらせ、さらに深く淫らに互いを繋げようとした。
空いた左手を俺の背に回し、わざとらしい程の力を入れて爪を立ててくる。
少々歯痒かったが好きにさせてやった。
「はぁ……ッ、ぁ、……ぁッ」
牙を剥いて獲物の喉仏にむしゃぶりつくみたいに俺は奴に口づけた。
背から移動した奴の手が俺の髪をまさぐって、握り締める。
吐息も逃がすまいと唇を密着させたら、眉根を寄せて、頭皮に爪を立ててきた。
「ッ……このサディストが」
「どっちがだ、隹」
俺の舌を吐き出して奴は言い返してくる。
こんな関係をつくるきっかけとなった日が脳裏に蘇って、俺は、ふとその唇に目を奪われる。
あの夜だけは肌を重ねる前にこの唇を犯したんだ。
まだ下から数えた方が早い階級に属する頃だった。
任務を受けて、俺と奴はある研究施設の人間を皆殺しにした。
下っ端だったので事細かな仔細は特に知らされていなかったが、任務を受ければ遂行するのみ、躊躇も恐怖も皆無だった。
初任務で些か興奮気味でもあったのだ。
込み入った事情など然して気にもならなかった。
夜、森林地帯の奥深くに建つ研究所の電気系統を不能にし、俺は妙に赤っぽい非常灯の明かりの中、研究員九名と警備五名を殺害した。
総員二十九名と聞いていたから、奴が残りを殺しているかどうか確認し、立ち去る前に施設内の至るところに仕掛けたタイマー式爆弾の起動スイッチを入れて、壊滅を見届ければ、そこで任務終了。
俺は死体が散らかる正面玄関で奴を待つ事にした。
そして、間もなくして奴は現れた。
「……」
闇に紛れやすくするため黒一色の出で立ちで、蒼白な肌がより一層際立って見える。
頬には血飛沫が飛んでいた。
「……十五人殺したが……」
そんな血塗れの姿で平然と殺した人数を口にした奴に俺はその場で欲情した。
血の匂いに酔っていたのかもしれない。
惑わされたのかもしれない。
「隹……?」
その場で俺は奴に深く口づけた。
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