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Cage-2

「……隹……」   我に返ると、真下にいる式が喘ぎながら俺を見上げていた。 「お前……何を考えて……る?」 「ああ……あの夜の事だ、初任務の」 我知らず力を強めていたのか。 握力を緩めてみると奴の右手首にはくっきりと跡が残っていて、俺は苦笑した。 「また、それか……下らない……」 俺が突く度に全身を揺らめかせて、奴も、僅かに笑った。 唇の辺りに二人分の唾液が伝っている。 その様を見下ろしているとえげつない欲望に拍車がかかって、奴の中で俺のモノは更なる硬さを帯びた。 「ぁ……ッ」 片頬をソファに擦らせて奴が呻吟する。 俺は露となった滑らかな首筋に歯を立て、呟いた。 「あの夜に戻れたら力づくでもお前を犯すのに」 口腔に血の味が広がったが、俺は気にもかけず、奴の唇に無我夢中で喰らいついていた。 「……任務中だぞ」 しばらくして顔を離すと、奴は下顎を濡らしたまま俺を睨みつけてきた。 「それに、男同士だ」 「……」 「殺しで気でも狂ったか、隹」 その時、俺は全くその通りだと奴の言葉に同意し、そこで欲望の継続を中断した。 最高の絶頂を味わえたかもしれない絶好のチャンスをみすみす逃したのである。 任務終了の報告を終えて宿舎に戻ると、奴の方から、あろう事か俺に覆い被さってきた。 「……男同士だよな?」 粗末な簡易ベッドに押し倒された俺は揶揄を含んだ口調で言ってやる。 奴は「ああ、そうだな」と、淡々とした物言いで返事をした。 「さっきの興奮がまだ残っている……短時間にあれだけの人間を殺した……その興奮が」 「ああ」 「あの時間を共にしたお前となら、また、それを共有できるかもしれない」 そう。 俺達は殺しの興奮にすっかり心身を巣食われていた。 対峙した相手に凶器を振るい、血を迸らせて命を絶つ、残虐な行為で絶え間なく覚える刺激に全てを犯されていた。 「試してみるか?」 そして俺と奴は二度目のキスを交わした。 密着し合わせた唇をきつく食んで、相手を蹂躙し、穢すように。 無慈悲な強姦魔の手つきで互いの服を剥いで裸にしながら。 「あ……!」 真下から貫かれると式は弓なりに背を反らし、俺の頬に髪を擦りつけてきた。 ベッドの上だと軋みがひどいので、俺達は床に移動し、緩衝として毛布を敷いて事に及んだ。 まず掌に吐き捨てた唾液を潤滑剤代わりに自分の性器に纏わせる。 そして背後から奴を抱き寄せ、両膝の裏に手を回してしなやかな体躯を持ち上げ、浅く繋げたところで残酷にも手を離した。 「は……ぁ、ッあ……く」 奥深くまで一気に入ってきた侵入物に奴は悶える。 相当な痛みに違いないが、それだけではないはずだ。 その証拠に、奴のモノも勢いづいており、触れてみると強く脈打ち始めていた。 「……どうだよ、式……いいか?」 俺は顔をずらし、奴の肩に顎を乗せて横顔を覗き込んでみた。 目を固く閉じた奴は荒い呼吸を反芻していて瀕死の獣のようだった。

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