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Falling-5

「……欲しい……」 己の体に出入りする熱の塊に理性を熔かされ、全身に伝う肉欲の触手に締め付けられて式は求めた。 「お前がもっと欲しい、隹……」 病熱に魘される病人じみた覚束ない口調であったが、隹にはしっかりと聞き取る事ができた。 そして、彼は式と繋がったまま、膝を突き、その場で立ち上がった。 「あ、あ、あ……!」 揺さぶりをかけられて、頑健な肉体に抱き着いていた式はさらに力を込めて隹の雄々しい首筋に縋りついた。 深まる陶酔感に溺れ、つい嬌声を迸らせる。 押し広げられた双丘の中心に無遠慮に突き入ってくる屈強な楔が見え隠れする。 狂おしい振動が、そこから体内に重く淫らに鳴り響いていった。 突っ立った状態で式の体を何度か揺さぶっては悶絶させ、隹は、シャツに覆われたままの彼の背中を、勢いをつけてそばの壁に打ちつけた。 「ぁッ」 内壁を摩擦して奥深くを穿たれて式は達した。 しかし白濁は飛散したが熱が衰える事はなく、未だ硬く勃ち上がらせたまま、隹の荒い腰遣いに呻吟した。 「あッ、あ……ッ、はぁッ、ぁ、ン」 隹は壁と自分の間に式のしなやかな肉体を挟み込み、速度を著しく上げて突きまくった。 鳴き声にも似た式の喘ぎが強くなった雨音に上乗せされる。 汗で両手が滑りそうになるので一端体を支え直すと、ビクリと式の皮膚が戦慄いた。 締め付けが増し、一層際どくなった感覚に隹も低く呻く。 「ッ、す、い……」 目前の頭を抱え込み、力に漲る脇腹に足を絡ませて、式は隹に絶頂を強請った。 「あ、もう……ッ」 「イクか?」 声を出すのも集中が途切れそうで億劫だったが、願ってやまない温もりを抱え込んで、隹は言う。 「俺もだ」 式の汗ばんだ首筋に噛み付いて隹は達した。 溢れ出る衝動で式も立て続けに絶頂を迎える。 お互いをしとどに濡らし合うような達成だった。 しばらく大きな息遣いが部屋の中に木霊して、外の雨音と同調した。 やがて呼吸が落ち着き、達する際に味わった興奮が静かに遠退いていっても、式は隹に抱きついたままであり、隹は彼を抱え上げたままでいた。 「……隹ーー」 話しかけようとした式の唇を隹は塞いだ。 ただすべてを繋げていたいという思いで、これ以上ないくらいに深く傲慢に口づけた。 壁伝いに式を下ろして、共に床に膝を突き、その髪に五指を滑らせて、握り締める。 薄目を開け、瞼を閉ざして息を忍ばせている式を目の当たりにすると、去ったはずの興奮がまた体の内に舞い戻ってきた。 「式、俺はまだ足りない」 壁際で式を押し倒した隹は、そう囁いて、再び彼に覆い被さった……。 こんなにも己は卑しかったのかと、式は思う。 「はぁ……ッ」 軋むスプリングの上でこぼれる吐息。 全裸となり、腰を高く掲げた彼はその男の指先に肉の内側を掻き乱されて、下肢の中心を痙攣させる。 太腿を伝って流れ落ちる白濁を見届けた赤髪の男は、それに塗れた手を傍らに落ちていた布キレで拭き上げた。 「私の留守中にとんだ事をするな、あいつは……」 繭亡はそんな独り言を呟き、力を抜いてベッドの上にうつ伏せとなった式の真上へ移動した。 「すまなかった、式」 「……いや」 顔色の優れない式を見つめ、その頬を撫で、繭亡は彼にキスした。 仰向けにされ、式はぎこちない手つきではあったが繭亡の背中に手を回し、自ら唇を開いて彼を招き入れた。 「ン……ん」 巧みで濃厚な舌遣いに酔い痴れながらも、式は、数時間前の強烈な抱擁を頭の片隅で否応なしに思い出す。 『俺はまだ足りない』 荒々しく襲い掛かってくるあの男……どれだけ嫌がろうとも有無を言わせずに入ってくる……俺の中へ。 あの腕の中にいると理性が飛ぶ。 どこにいるのかわからなくなり、本能が快楽を叫び求めて、溺れてしまう。 不敵な抱擁に堕ちていく……。 堕ちていく。 あの願ってやまない温もりをこの手に抱けるのなら、どこまでも、誰を傷つけようとも。 俺の道連れにしてやる。 光栄に思え、式。

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