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Bloody lovers-3
依然として肉の内部を擽る指に際どい感覚を与えられて式の呼吸はすでに喘ぎと変わっていた。
「はぁ、ぁっ、はぁ」
移動した唇がもう一つの突起を貪り始めた。
先程より荒い舌遣いに式は喉奥で悲鳴を上げ、硬質の皮膚に爪を立てる。
早く、早く触ってほしい。
そんな浅ましい欲求に意識を蝕まれて居た堪れなくなった。
快感と、まだ多少形を留めている理性と板挟みになって情けなくなった。
「勃ってるな」と、膨れ上がった突起を啄ばみつつ隹は上目遣いに式を見る。
「嬉しいぞ、式」
「……」
「俺だけに感じろよ。他の奴には感じるな。そんな声も、顔も、俺だけに」
式の煩悶は隹のその言葉で解けてバラバラになった。
ああ、そんなに求められているのか、俺は。
俺も求めていいのか。
抹殺すべきはずの敵幹部であるこの男を。
「触ってくれ……隹」
隹は汗ばむ肌に顎をつけて今一度式を見直した。
「どこだ? どこに触れてほしい?」
真摯な目つきで問われて、式は、広げた自分の掌を熱く息づく中心へと持っていった。
伏せた眼差しに我知らず密やかな媚態を含ませて青水晶の鋭い双眸を見下ろす。
「俺の……ここを……お前の手で」
「……」
「滅茶苦茶にして……」
そう言い終わるや否や式はベッドに押し倒された。
その男は捕虜だった。
手酷く痛めつけた事もあったし、嘲笑し、何度も汚いやり方で踏み躙った。
決して自由にさせまいとアジトの地下室に閉じ込め、片時も、その両手首の手枷を外さなかった。
「あぁ……っ、はぁ……ぁ、ぁ」
薄闇に満ちたアジトのとある部屋の中。
ベッドにうつ伏せにした式の背に覆い被さり、隹は彼の熱源を捕らえた手を上下に激しく動かす。
すでに一度達成を迎えたはずの肉欲は即座に次の火照りを宿し、淫らな雫を零し続けていた。
もう耐えられない。
もう、こいつの中へ入りたい。
また痛めつけるかもしれない。
嘲笑して踏み躙って、拘束するかもしれない。
その心に血塗れの深手を負わせるかもしれない。
でも、それでも、こいつと一つになりたくて堪らない。
愛したくて堪らない。
「式、もういいか」
耳元で紡がれた低い声音の問いかけに、式は、肩越しに苦しげに隹を見た。
「……来てくれ、隹……」
扇情的に濡れた眼差しに、その心身に、ただ飢える。
もっと見つめてほしい。
隹はそう思った。
「あ……っ」
腕をとり、うつ伏せにしていた体を仰向けにした。
衣服の内で窮屈そうに身を潜めていた己の熱源を取り出し、剥き出しの両足を開かせて、双丘の狭間に先端をあてがう。
伝い落ちていた白濁と潤滑剤、自身の先走りが重なって卑猥な音が薄闇に鳴った。
指で開かせていた入り口を張り詰めた肉欲でさらに抉じ開けて、隹は、式と繋がった。
「あぅ……っ、ん」
初めての行いで生じた苦痛に式は片頬を歪める。
上体をやや前に倒した隹は引き攣る目元を撫で、親指で唇をなぞった。
式の両足を脇腹に抱えて律動を始める。
止まらない切実なる欲望に従って隹は式を抱いた。
無残な殺戮が繰り広げられた血塗れの大地に荒々しい呼吸が反芻される。
深手を負い、立っているのがやっとという式は複数の敵に囲まれた中、一人だけに殺気立つ目線を定めていた。
片頬を血に染めた隹もまた彼だけを見つめていた。
全身に湧き上がる強靭な殺意の絶頂に自然と笑みを零し、凍てついた風に敵意を靡かせながら。
互いの世界に互いの存在だけしか許さないかのように、二人は。
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