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続・ねこになりたくない-2

隹は迷わず仮病を使って欠勤の報告を会社に入れた。 「やだっ……隹のへんたいっ……きちくっ……」 「こら、そんな言葉どこで覚えてきた、小学校低学年の教科書には相応しくないだろうが」 「やだーーー……っ」 嫌がる式をベッドへ持ち運んで嬉々として発情期猫又のボディチェックを行っていたところ。 「……」 指先がありえない感触を拾って……隹は驚愕した。 「……おい、式」 「にゃぅ、ぅ、ぅ、ぅ」 「……これ、何だ、一体」 「にゃぅ……?」 「……こんなの、お前、この間までついてなかったじゃねぇか」 「この間」というのは愛の交歓に一方的に耽った先週の土日を指す。 「おれになにかついてるの……?」 ああ、ついてる、ガッツリついてる。 「お前、自分で気づかなかったのかよ」 「そんなとこ、さわるの、といれだけ……」 隹に悩ましげな悦びを教えられた式。 自ら知ろうとはしない。 たまにひとりのときに切なくなることもある。 でも、怖がって、おさわり一つだってしてこなかった。 ベッドにあぐらをかいた隹。 膝に乗っけられ、後ろから抱きしめられた式。 ジッパーがきっちり上げられたパーカー裾に潜り込んだ不埒な隹の利き手。 柔な太腿を割って、一番火照った場所に触れて、発覚した事実。 雄である式の体に雌の性器が出来上がっていた。 「どういう仕組みの発情期なんだよ」 「にゃ……?」 冷えた朝、熱もつ華奢な体で暖をとるように式を抱きしめていた隹は、想像もしていなかった事態に思いっきり眉根を寄せた。 ペニスは、ある。 双球もある。 その下に、これまでになかった、膣も。 「何て言うか、贅沢というか、欲張りというか」 「っ……おれよくばりねこじゃないっ」 発情期に突入したことは察したが、自分の体に来たした具体的な身体的異変には気がついていない式に、隹は思わず笑った。 「っ、いま、おれのことばかにした……」 「馬鹿にしたわけじゃない、式」 可愛くて、つい、な。 「お前の体の神秘に驚いて笑うしかなかった」 長く太い指で、出来上がったばかりの亀裂を、ゆっくりなぞってみる。 「んにゃっ……?」 これまでにない刺激をじんわり浴びせられて式の切れ長な双眸はたちまち潤んだ。 「なぁ、わかるか、式」 左右の襞に指先を添え、緩々と開き、閉ざされていた蜜孔を外気に曝してみる。 「お前のここに女の一部が授けられてる」 「? ? ?」 「は……そうだよな、そうそう理解できないよな」 「っ……また、ばかにしたぁ……」 笑われて悲しがる式に愛しさをグングン募らせた隹は、行き場に迷っていたか細い手をとった。 心細そうに虚空で震えていた熱源を片手で支えてやり、もう片方の手で式自身の手をソコに導いてやる。 「ほら、ここだ」 「っ……な……なに、これ、やだ」 「こら、逃げるな、ちゃんと自分で触って確かめてみろ」 ちょこっと触れるなり、怯えて去りかけた手を、隹はやや強引に引っ張り戻した。 「ほら」 「こんなの、知らない……こわい」 「怖くない、式」 「やだ、こわい」 自分の体に起こった異変を怖がる式に隹は言ってやる。 「何にも怖くない、大丈夫だ」 怖々と添えられた式の指の上からソコに触れたり。 式の指を動かしてもっと丁寧に触れさせてみたり。 急に授かった蜜孔に対する優しい愛撫を教えられた式はもどかしそうに喉を反らした。 ごろ、ごろ、ごろ、ごろ 「式、お前……喉が鳴ってる」 「うにゃ、ぁ……」 ごろ、ごろ、ぐる、ぐる 腕の中で喉を鳴らす式に隹は我慢できなくなり、自身の指で積極的に触れ始めた。 熱源の先端を剥くように撫で、同時に、繰り返し上下に蜜孔をなぞる。 亀裂の頂きに位置する、控え目に膨れた突起なる肉芽も、そっと。 「みゃぅぅっっ……っ……そこ、なに……変……」 「変な感じ以外に。どう感じる」 「にゃ……こりこり、してる……」 ムニ、と摘まんでみれば。 式は頼りない細腰を堪らなさそうにくねらせた。 「あ、っ、ぁっ、にゃぅ、っ、やぁ、っ」 「ん……濡れてきたな」 「ぇっ、なん、で……おれ、おもらし、した……?」 柔らかな耳たぶ一片まで発熱させ、すでに喘ぎ始めている式の唇にキスしながら、隹は教えてやる。 「俺に感じてるだけだ」 「ん、む……っ……ふ……ぅ……っ」 「ほら……また濡れた」 「っ……ぷ、ぁ……っんむ……っ……は……っ……んん……っ」 深く口づけて、唇を解いて、また塞いで、絡めて、解いて。 その間も隹にずっと触れられてどんどん溢れてくる式の愛液。 式がキスを気に入っていることを探り当てていた隹は安心効果も兼ねて長く深く唇を重ねた。 興味が湧いてやまない新たな性感帯を高めていくのに夢中になった……。

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