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汝の隣人を愛せよ-6

「えっ」 沈んでいたはずの式は慌てて辺りを見回した。 ドアが暗幕で覆われているバスルームに通路の明かりは一切届かず、黒い視界には何も入ってこない。 「おい、隹……」 思わず硬直する式を後ろから抱きしめた、力強い両腕。 「あんた、もしかして、妬いたのか?」 低い笑い声が微かな振動を耳元に伝えてくる。 「可愛いな、式」 何の躊躇もなしに広げられた掌が下肢を包んだかと思うと。 官能的な手つきでじっくり揉み上げられた。 「あ……っ、やめてくれ、何も見えない」 「興奮するだろ」 「……そんなこと……」 頬に指先が添えられて顔の向きを変えられる。 湿った微熱に唇を塞がれた。 存在を誇張するように、尖らされた舌先が口腔へ滑り込んで、淫らに這う。 「ん……ン……」 呻吟した式が身じろぎすると、テーブル下に置かれていた何かに足がぶつかって、転がる音が響いた。 「気にするな、容器か何かだろ」 「あ、でも、写真は」 「定着に入れっぱなしにしていても黄ばむくらいだから放っとけ」 「っ、何か踏んだ……っ」 「バットを引っ繰り返さなきゃ別に何を踏もうと蹴ろうと構わない」 暗闇の中、暗室の主は竦む式をいつになく優しくリードする。 バスタブの縁に座らせてやると、両足の間に割って入り、手探りでファスナーを下ろした。 見えない熱源の根元を掴んで口に含む。 搾るように上下の唇を動かして、わざと、音を立てる。 暗闇だと見えない視覚の代わりに聴覚が冴え渡る。 「……バスタブの底に落ちるなよ?」 式は縁を掴んで何とか堪えた。 付け根から中程まで激しく撫で擦られるのと同時に先端を舐め尽くされる。 とっくに感度のポイントを熟知しきっていた隹は、容赦なく、そこを攻めてきた。 「ああ……だめ、そんなの……」 暗闇に手を伸ばして、探り当てた髪に触れると、掴んだ。 ぐしゃぐしゃに乱して、どうにかなりそうな昂揚感を紛らわせた。 「あ、あ、あ……っ……隹……」 欲望に温む暗闇はそれからしばし式の掠れた悲鳴を呑み込み続けるのだった。 「意外と嫉妬深いんだな、式」 乱れたベッドの上でシーツに頬杖を突いた隹は囁く。 式は答えない。 当然だ、眠っているのだから。 初めて訪れた隹の部屋をゆっくり満喫する時間も与えられずに、いつになく優しい、そして飢えた隹の餌食となって、すっかり疲れ果てて熟睡していた。 「あんたの仮面を一つずつ剥がしていくのが楽しみだ」 隹はそう囁くとサイドテーブルに置いていた一眼レフを手に取った。 ストロボをたかずに一枚、シェードランプの光を頼りに式の寝顔を収める。 何度見ても綺麗な寝顔だ。 きっと、一生、見飽きない。

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