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Slavery/敵幹部×捕虜

降り頻る豪雨の最中に眩い閃光が時折走る。 執拗な追っ手を振り切ろうと林の中を駆けていた式は突如立ち止まった。 目の前に立ち塞がった男を見、身構える。 研ぎ澄まされた神経が只者ではないと雄弁に己へ告げていた。 唐突に闇夜を貫いた白刃の如き稲光が男を照らし出す。 凄まじい雨音や雷鳴が意識の外へ遠退く程の緊張と殺気に囚われた一瞬だった。 「いつか泣き喚くさ、お前も」   底冷えする地下室の片隅で式は口腔に残る血の味をいつまでも嚥下していた。 彼の正面には隹が相変わらず不遜な態度で立っていた。 丈の長いモッズコートがさも頑健そうな体型によく似合っている。 月と同じ色をした長い髪はハーフアップで縛られ、青く澄んだ水晶の双眸は傷ついた捕虜を延々と嘲笑していた。 「大したものだな。我々の拷問に音を上げないとは」 それまで彼への暴行に勤しんでいた部下二名を背後に控えさせ、隹は言う。 目隠しをされた式の口元には血がこびりついていた。 頬も痛々しく腫れている。 容赦ない拷問の惨状を物語るようだ。 床にも血の跡が点々と散っていた。 「きっとお前には被虐趣味があるんだろうな」 上官の言葉に部下は笑いながら頷いた。 式は何の反応も示さない。 壁に背中を預けているが今にも崩れ落ちそうだった。 「そうだな、お前のために趣向を変えてやろうじゃないか。こいつ等は飢えていてな、式。食えるものなら何だって食う」 隹は背後に目をやり、心持ち顔を傾けて捕食の合図を部下に送った。 「食らっていいぞ、お前等」 セラは懸命に自分の上官を説得しようとしたが彼は聞き入れなかった。 むしろ嘲るように彼女の言葉を跳ねつけて、一笑し、これみよがしに踏み躙った。 「兄さん、隹少佐を止めて」 妹の切なる願いに繭亡は首を左右に振る。 隹と同じ階級にある以上、彼の行動を制する権限が自分にはない。 断じて口出しできる立場ではなかった。 「すまないが私には何もできない」 すでに地下室では拷問以上の酷い行為が始められていた。 もはや止める術のないセラは表情を凍りつかせたまま、それが終わるのを待つしかなかった。 壁際に佇んだ隹は式が部下の欲望に曝されるのを傍観していた。 彼等の飢えがある程度満たされると次の部下を呼びにやり、同じ事をさせた。 そうして半日の時間を費やした。 式はただ黙って揺さぶられていた。 時に手負いの獣じみた声を短く上げるくらいで。 哀願や泣き声は一向に聞こえてこない。 その肉体を無感情に部下達へ明け渡していた。 部下が去った今、隹はやっと床に打ち捨てられた捕虜へと近づいた。 「ひどいザマだな」 部下の何人かに命じたおかげで式の頬には白濁が残っていた。 硬く屹立した性器を強引に捻じ込まれたので口角も切れ、血が滲んでいる。 剥き出しの下肢には白濁と血の両方が冷えた皮膚に付着していた。 隹はセピア色の髪を鷲掴みにすると強引に引き起こした。 「これがお前の言っていた気高い精神というやつか? 好き勝手に男にぶち込まれて顔に精液を浴びせられて、それでも耐えるというのが」 笑えるな、と隹は続けた。 式はやはり何も返さない。 緩んだ唇の狭間から掠れた呼吸を繰り返すばかりだった。 「このまま放置して死なせてもいいが、さすがにそれでは繭亡が黙っていないだろう」 隹は式に服を着るよう命令した。 体中に響く、通常の拷問とは違う痛みに手負いの捕虜はなかなか動き出せずにいた。 「俺が着せてやろうか」 嘲笑を含んだその言葉に、目隠しされた捕虜は手探りでそばに落ちていた衣服を見つけ、緩慢な動作で身に纏った。 しかし、どうしたって、立てそうにない。 「汚れたお前を洗ってやる」 そう言って、隹は軽々と式を肩に担いで地下室を出、シャワー室へと向かった。 途中、通路で立ち尽くしていたセラと擦れ違い、彼は戯れに声をかけた。 「お前も手伝うか、セラ。この通り、匂いや汚れがひどいからな。一洗いしようと思うんだが」 セラは強張った顔で上官の誘いを断った。 死んだように肩に担がれている式を直視できずに、斜め下へ視線を落として。 青ざめた彼女をそこに残して隹はシャワー室を訪れた。 薄暗く、黴臭い。 やけに広々としたそこには彼等以外誰もいなかった。 隹は無造作に服を脱がせると、裸身の式をタイル張りの床上へと引き摺った。 そして未だに顔の上半分を覆っていた目隠しを剥ぎ取った。 「……お前」
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