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ソリッド・シチュエーション・ロマンス-4

絶句し、咄嗟にキスされた場所を掌で庇って、すぐに顔を離した隹を震える双眸で式は見上げた。 「お前が抵抗しないから」 みるみる頬を紅潮させていった式に愉悦が止まらずに隹が三度目のキスに至ろうとしたところで二限目終了のチャイムが鳴り響いた。 「ほら、そろそろ保健室の女主人が戻ってくる、生徒も来るかもしれないな」 「っ……は……早く退いて……」 「お前から俺にキスしてくれたら退いてやる」 どうしてそんなこと言えるんだ。 他人を嘲笑うような身勝手なことばかりできるんだ。 「嫌だ」 「じゃあこのまま続行だ」 「わぁっ……嫌だっ、隹っ、やだ……!」 いきなり両手首を掴んでシーツに縫い止め、猛然と襲い掛かる素振りを見せた隹に式は涙目で叫んだ。 隹は忠実に動きを止めた。 しかし退こうとはせず、自分よりも遥かにサイズを下回る体にのしかかったまま、危うげな獣性をちらつかせて式を見つめた。 保健室の外がざわつき始める。 追い詰められた十四歳はぽろりと涙した。 耐え難い精神的苦痛を強いられるこの餌場から早く逃れたいと、自由になった両手で恐る恐るパーカーを掴み、薄目がちでいる隹に服従のキスをしようとーー 「式、具合よくなった?」 仕切りのカーテンが開かれると同時に聞こえた、いとしい声。 式は……死にたくなった。 声の主を確かめるのが怖くて、身も心も張り詰めて、呼吸さえ忘れそうになった。 「……式……」 あ。 どうしよう。 まさか和歌葉に見られるなんて。 恥ずかしい、死にたい、隹、ひどい、なんでこんなことするの、こんなことして楽しいの、どうしよう、和歌葉に何て言えば、おれ、わからな……。 「式、この人と付き合ってるの?」 カーテンの狭間に立つ、見事なまでに赤面している和歌葉を式は見た。 「ああ、まぁな」 次に、いけしゃあしゃあと肯定した隹を驚愕の眼で見た。 「誰にも秘密の関係だったんだけどな、現場を見られたら言い逃れできない、なぁ、式?」 ベッドから立ち上がった隹は何も言えずに途方に暮れている式の頭をよしよしと撫でる。 「午前中に贅沢な休憩、どうもありがとう、式君はどう? 次の授業には出られそう?」 保健室に戻ってきた養護教諭はにこやかに隹に礼を言い、式の顔色を確認するなり「早退した方がいいかしら」と、その体調をより真剣になって案じたのだった。

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