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捕虜も孕むンです-2

『降伏する、他の者には手を出すな』 白刃の如き稲光が次から次に瞬く中で。 森林戦で傷ついた多くの仲間を庇い、奴は、臆することなく俺達の前に屈した。 唯一、俺に刃の先を到着させた男。 敵の攻撃による掠り傷なんてここ数年ご無沙汰だった。 単身であったならば逃げられただろうに。 ご丁寧に負傷者を気遣って自ら跪いた。 『俺は式だ。お前達も礼儀の一つくらい守って名乗ったらどうだ、侵略者ども』 轟く雷雨も打ち負かすほどに凛と通った声。 自ら進んで膝を折っておきながら、その切れ長な双眸は屈辱に歪むどころか、静謐たる耀きを放っていた。 俺に迷わず向かってきた瞬間から決めていた。 こいつは俺のものにしよう。 『や、め……ッこの下衆が……ッあ……っいや、だ……!』 体の底まで暴いて血肉の隅々まで支配してやる。 『ああ……ッく……ぅ……ッ』 光を闇で塗り潰すように、堕落させるように、犯してやる。 『離せッ……あっ……あっ……す、い……ッッ』 さて。 今日の捕虜はどのようにして虐げてやろう? 「それ以上近づいたら舌を噛み切って死ぬ!」 扉の外に立っていた見張りに休憩を言いつけ、アジトにしている廃虚の地下室を訪れるなり、隹に飛んできた一声。 隅っこで毛布に包まった式が怒りにわなわなと震えていた。 捕らわれの身となって一番のおかんむり状態だ。 外敵を威嚇する獣じみた眼差しで隹を睨みつけてくる。 「どうした、金切り声なんぞ出して、お前らしくもない」 隹が革ブーツの底を鳴らして一歩進めば「俺は本気だッ!」と悲鳴にも近い声を。 本当にどうしたんだ、コイツ。 いつもなら説教三昧、あーだこーだ耳にタコができそうなくらい延々と垂れ流すくせに、今日はやたら逃げ腰じゃあないか。 「それなら死ね」 式は目を見開かせた。 セラがくれた毛布を片手でぐっと握りしめ、平然と近づいてくる敵幹部に否応なしに気圧された。 「無様に野垂れ死ね。弱い仲間と己を呪え。侵された祖国を焦がれながら死ね」 式は。 隹と初めて出会ったときのように立ち向かってきた。 つい先ほどまでのヒステリーじみた振舞がまるで嘘のように、ただ矜持に純粋に、刺し違えても構わない、そんな覚悟を思わせる迷いのない鮮やかな身のこなしで。 隠し持っていたナイフを翻した。 「このナイフ」 砂塵で薄汚れた床にふわりと落ちた毛布。 「見覚えがある」 隹は殺気に漲る切れ長な双眸で真摯に自分を見据える式の両手首を片手でまとめ上げ、塗装の剥げ落ちた壁に押さえつけた。 上半身に引っ掛けている迷彩のジャケット以外、何も身に着けていない、ひどく悩ましげなスタイルの捕虜。 「ソレの持ち主と一緒だ」 隹は自分の片手に携えたナイフを確認して失笑する。 「理解不能とか何とか言っておきながら。阿羅々木め。軍法会議モノだ」 地下室の隅へ忌々しげに阿羅々木の刃を放り投げるとシャープな線を描く式の下顎を勢い任せに掴んだ。 「アイツに媚びたのか、式。俺を殺すための武器をくれと。猫撫で声でも出して縋りついたか」 指先が露出するタイプの革手袋をはめた隹に強引に上向かされた式は答えない。 研ぎ澄まされた殺気を惜し気もなくただ突きつけてくる。 なるほど、な。 さっきのアレはフェイク、か、俺を油断させて阿羅々木のナイフで致命傷狙い、か。 「手癖の悪い捕虜にはお仕置きだ」 隹への殺意に心身を乗っ取られていたはずの式の双眸が俄かに波打った。 傲慢な唇に唇を奪われた。 執拗極まりない舌に縦横無尽に口内を侵略された。

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