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あなたはヴァンパイア-4

ある夜のこと。 「何してる、貴様等」 地下監禁室の頑丈な扉前で見張るどころか幹部専用の性処理捕虜にこぞって手を出そうとしていた、個人プレーが目立つ、仲間思いに著しく欠けた第三部隊の部隊長が式の元へやってきた。 「ソイツは俺専用だ。無価値な精子一滴でもぶっかけてみろ、股座から伐採するぞ」 幹部の一人である隹少佐だ。 月と同じ色をした短い髪に青水晶の鋭い眼、カーキ色のミリタリージャケットを羽織り、誰も彼も見下したような眼差しが至極様になっている。 武器、ナイフ、優れた運動能力でありとあらゆる体術を習得し、接近戦を得意とする。 「それともお前が俺の部下を誘ったか、式?」 性格、俺様。 退散する余力を残して叩きのめした部下が去り、凍てつく地下監禁室に彼と二人きりになった式は。 最も軽蔑している相手から遠慮なく視線を逸らした。 「今日はお前に土産がある」 「ッ……やめろ、それを俺に近づけるな」 「躾がなってないお前の同類を捌いていたら、な。ついうっかり」 蔑ろにされた口枷。 モッズコートを脱ぎ捨てた隹は片腕に刻みつけられたばかりの新鮮な切り傷を嫌がる式の唇に押し当てた。 同時に慈悲なきナイフを捕虜の首筋にあてがう。 動揺して戦慄く式の切れ長な双眸を愉しげに覗き込みながら。 「咬みついたら即あの世逝きにしてやる」 「……」 式は幼い主君に誓っていた。 人の血は二度と呑まないと。 どうしても飢えたときは屍の腐った血で紛らわせていた。 「呑め、式」 忌々しいコイツの血など、主に誓ったじゃないか、理性はそう叫ぶ。 しかし吸血鬼の本能は。 唇に触れる瑞々しい薫り豊かで豊潤な血の感触。 欲して、欲して、もう堪らなくて。 隹の青水晶に見つめられながら式は彼の血を喰らった。 「凄いな」 「あっ……あんっ、だめっ……ああっ」 「この間より締まって、熱い」 「もっと、もっと……っ隹……ッ」 石床に拡げられたモッズコートの上、手錠まで外された式が喘いでいた。 久方ぶりに新鮮な血を喉に得て興奮したようだ。 理性は崩れ、身も心も快楽に平伏し、敵幹部の下で明け透けに乱れている。 肌蹴たシャツの狭間はすでに自ら欲望の雫を放って白く濡れていた。 「この淫乱が。そんなに俺の血はうまかったのかよ?」 図太い隹の肉杭が蕾孔に突き刺さり、雄膣を絶え間なく引っ掻き回されていた式は本能に堕落した双眸で敵幹部を見上げた。 「隹……もっと……欲しい……」 普段は人間を戒めるような口振りで始終凛としていた式の堕落ぶりに隹も同じく興奮が止まらない。 そんな隹の視界に式の首筋がふと引っ掛かった。 色濃く刻みつけられた繭亡の痕だ。 「ん……!!」 同胞が刻んだ痕に咬みつくように口づける。 自分の痕で塗り替えるように。 「や、ぁ……ッ、早くッ、欲しい……ッ」 「急かすなよ、吸血鬼」 上書きに成功した隹は一端顔を上げるとその下唇を躊躇なく己の歯列で噛み切った。 噛み切るなり式に口づけた。 ナイフを翳すのも忘れて血の餌付けにのめり込んだ。 何度も開閉を繰り返す唇の狭間で絡まり合う舌と舌。 互いに獣じみた息遣いを交わして。 狂う寸前まで血の味のするキスに溺れた。 愛の囁きなど一つも無い。 二人の欲望がただぶつかり合うだけ、だった。 「悪しき牙から我々を救い給え、アーメン」 「……全身(なます)の如くに切り刻まれて死しても尚、地獄の炎で焼き尽くして彼奴等を永遠に苦しめ給え、アーメン」 「我が子なるナイフの刃が渇かぬよう、この争いよ、いつまでも常しえに続き給え、アーメン」 「皆に等しく安らぎが来たらんことを……」

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