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ヴァンパイアはあなた/吸血鬼×人間捕虜

■「いい玩具が落ちてるぞ」 「救おうと思っていた相手に裏切られた気分はどんなだ?」 「子宮があれば吸血鬼の子が孕めたのにな」 「何か思い出しそうなのに……クソ、頭が割れそうだ……」 過去に囚われた捕虜。過ぎ去った悪夢なんてただのまやかしに過ぎないというのに。 そんなもの俺が忘れさせてやる、式。 吸血鬼と人間が争いを始めて幾星霜。 「いい玩具が落ちてるぞ、繭亡、阿羅々木」 瓦礫と化した一つの街。 暗雲に太陽が閉ざされた暗い真昼、厳かに舞い降りる灰。 不規則に連なる武装した兵士らの屍。 「う……」 カーキ色のミリタリージャケットの裾を猛禽類の翼の如く翻し、墓場さながらに憂鬱な街を闊歩していた吸血鬼の隹は彼を見つけた。 瓦礫に埋もれるようにして蹲った彼。 全身土くれに塗れて煤けていたが深手は負っていないようだ。 迷彩の戦闘服、血の煩悩を揺さぶる悩ましげな首元にドッグタグが覗いている。 燃え燻る建物の陰から現れると音もなく背後へやってきた同胞の二人に隹は愉しげに言った。 「式。新しい玩具の名前だ」 「ふむ。なかなか悪くない」 「………………」 大尉である自分が指揮をとっていた部隊が他の隊もろともほぼ全滅して終わりを迎えたその日。 式の長い悪夢の始まりでもあった。

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