6 / 13

第6話

「吸血鬼…?」  軽く笑いが込み上げた。統夜は頭を掻き、少年を見る。  黒の上下の衣服。白い肌に、黒い双眸。長く艶やかな黒髪。 「そうだ」  一言で肯定した吸血鬼であるという少年、ノアールは、そこにじっと佇み統夜を見た。 「吸血鬼が、僕に、何の用、かな…」 「お前と契約したい」 「契約?」  なんの、と言いかけた統夜は、強力な力で引き寄せられた。 「…ん…っ」  胸元で、またしてもノアールが唸り声を上げた。  目を開けると、少年の双眸が間近に見えた。  唇と唇が、深く、合わされていた。 「な、…ん」  驚いて身を引き離そうとしても、少年のものとは思えぬ力で押さえつけられ動けない。  少年の舌が、統夜を翻弄する。  少年は僅かに唇を離し、統夜は力を緩めた。  だが、更に深く少年は唇を合わせる様に統夜の唇を塞いだ。  娼婦のような。  娼婦と身体を合わせたことも、唇を合わせたこともなかったが、少年の口付けはそれを思わせた。  何かが、下半身に触れた。 「!」  驚いて目を開けば、少年が目を細めるのが見えた。  少年の手が、衣服に包まれた統夜の股間を撫でていた。 「…ん、やめ…、なさい…!」  少年の指は、統夜の雄を形取るように上下し、愛撫を続ける。  動揺と、怒りに、統夜は震えた。震えたが、力づくでも静止することができず、少年を見た。  少年は、統夜を見つめ返していたが、不意に真顔に戻り、首を傾げた。 「どうしてだ?どうして、俺を抱かない」  少年は、首を傾げていたが、やがて眉を寄せ、統夜に詰め寄るように問い始めた。 「なぜ」  自由になった身体を、少年から引き剥がす。  額を拭い、少年を統夜は見た。 「当たり前だ…!じゃあ、どうして、君は僕にそんな風にできる」   「必要だから」  一言、少年は答えると胸元を掴み、衣服を開いてみせた。  「…え」  そこには、白い胸と、紅くケロイド状に十字が浮かび上がっていた。 「俺には時間がない。早く契約して、俺を抱け、トーヤ」

ともだちにシェアしよう!