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欲と心―欲

『いつもの店に。七時すぎには行ける』  ユウキからのメ一ルを見てニンマリ。結局松田の言ったことを考えずに、欲をとった俺です。こういう時は、その、なんだ、思いきり汗を流せばスッキリするだろう?色々スッキリだ!(アホアホだ)  学校にきて早々、ユウキに会うことを思いついてメ一ルした。バタバタしていて一週間近く顔をみていなかったしね。  花の大学生だ!青春はちょっと超えちゃったけど、謳歌しないとね。いろいろと。楽しみな夜に備えて授業は寝て過ごした。  今日はパエリアにしようと決めて待ち合わせの店に行く。スパニッシュオムレツも食いたいしニンニクのス一プもいいな。今日のおすすめはなんだろうと考えたら、ものすごく腹がすいてきた。昼のうどんってのがいけない。腹持ち悪いったらないね。  店に入ってユウキの前に座る。涼やかな顔が爽やかだね~。暑い夏でも汗かかなさそうにみえる。(でも汗かくとセクシ一なのだよ、これが)  ちょっと緩めたネクタイがこれまたイイですな。大人の男って感じがする。 「相変わらずスカした顔してるな」  口ではそんなこといいながら眼が優しい。  ユウキとは公園で知り合った。松田と飲んだ帰りススキノから乗り換えるのが面倒で一駅分歩いた。そしたら、もう少し歩きたくなって公園を西側にタラタラ歩いたら、なんだか気持ちよくなって、地下鉄に乗る前にビ一ルを飲むことにした。  ベンチに座ってイサムノグチの滑り台を眺めて、夜の公園ってのもいいな~なんて考えてたところに声をかけられた 「あんまりこっち側に一人でいると勘違いされるよ?」  そうだった、ここから3丁ばかり行ったところは、そういう人達の憩いの場所。勘違いされても俺の場合問題ないんだけどね。  顔をあげて相手の顔をみると、爽やかなリ一マンだった。目元が涼やかで清潔感溢れる姿にしばし見とれる。 「ねえ、勘違いしちゃってもいい?」 「うん。勘違いされても問題ないよ」  それがユウキで、それから会うようになった。一応つきあっているのかな?とはいえ愛情や恋心がある類の付き合いではない。  そもそも、そんなに真剣に付き合ったりって一部じゃないのかな。両方男で基本は遺伝子バラマキ本能だから、長くつきあったりしているカップルは少ないもんだ。 「ビ一ルにするよ。あとパエリアかな」  メニュ一をパラパラめくりながら、ビ一ルとス一プはやめといたほうがいいかななんて考えていたら背中の方から突然声が聞こえた。 「飲みすぎて途中で帰るなよ」  振り向くと、そこに立っていたのはサトル先輩様。  ちょっと不意打ちで不覚にも口をあけちゃった。このあいだ丁重にお断りしたつもりなんだけどな。偶然にしちゃあ出来すぎじゃない?  俺はここで二度目のビックリ。 「サトル、遅かったな」  今度はテ一ブルの向かい側のユウキに口をパクパク。サトル先輩はユウキの隣にすわりやがった。おいおい、どういうことなわけ? 「サトルが、自分になびかない奴に久しぶりに会ったって言うわけ。どんな奴だってきいたら、どう考えてもサトシなんだよ」 「まさかユウキさんとサトシが付き合ってるとは思ってないから、偶然ってびっくりだよな」  したり顔の眼鏡男子が憎たらしい。 「知り合いだったんだ、ユウキと先輩」 「まあな」 「そう。俺とユウキさんはシェアしあう仲なんだよね」  何を分け合うんだ、こいつら……そういうことか。  俺の体温が低くなった。こういう時の俺は松田でも近寄ってこない。コウタロウぐらいだな、どうしたの?って聞いてくるのは。松田の言うとおり、俺結構コウタロウのこと考えてるのかも。何もこんな最悪のときに考えなくてもいいのにさ。 「で、どう?サトシ。楽しいと思うんだけど」  ユウキの言うことを聞き逃していたみたいだけど、察しはついた。 「言っとくけど、俺、ものじゃないんで」 「けっこう刺激があって楽しいぜ」  うるさい、眼鏡男子! 「パエリア分けて食おうぜみたいにね、俺を勝手にシェアしないでくれますかね。 ユウキ、俺達の間に愛情があるわけじゃないのは俺にだってわかるけどさ。俺がそういうこと好きじゃないことくらいは解ってくれてると思っていたよ。 サトル先輩、言ったはずですよ。間に合ってますって。ついでにもう一回言わせて貰えば、あんたは俺の好みじゃない」  俺は冷たいを通り越して冷酷ぐらいまでレベルが上がった視線を二人に投げた。 「わ、悪かったよ、サトシ。そんなに怒るなよ。ちょっとした思い付きだったし、お前も楽しめると思ったからさ」  ユウキが手を合わせてゴメンのしぐさをしてるけど、まるで誠意が感じられない。薄っぺらいんだよ! 「ユウキさんばっかいい思いをしてズルいって思ったんだよ。そしたら、ちょっと遊んでみようか?ってユウキさんが言ってくれたからさ。てかサトシ、お前意外と純情だな」  ムカツク眼鏡男子は笑いやがった。もうこいつらと話す気もなかったし、ユウキと会うつもりもない。  猛烈に自分の部屋に帰りたかった。早くこの怒りを静めたかった。俺は立ち上がってひときわでかい声で言ってやった。店中聞こえるようなデカイ声で。 「あんたらタチ同士で、どっちのケツに入れるかジャンケンして決めれば?いっつもつっこんでるだけだから、たまにはウケに回ってみたらいいよ。別の世界がみえるかもね」  出口に向かう俺には、びっくりした客や、動きのとまった店員達が見えた。仲良く並んで座っているバカ二人がこのあとどんな視線を浴びようが俺には関係ない。ザマアミロ!  ちぇっ、ここのパエリア旨かったのに。もうこれないじゃん。

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