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5年越しのプレゼント

 大学にもいかず、ずっと本を読み続けた。  7という数字がアンラッキ一な少女ノヴァリ一は妊娠7ケ月なのに恋人にウォルマ一トに置き去りにされる。こっそりス一パ一で暮らし、そこで出産する。  17歳でシングルマザ一になり、色々な人に出会い、助けられ、支えられる。困難や苦悩があっても彼女は前向きだった。自分にはふさわしくないと、相手を思って手を離したのに、なくなった存在の大きさにノヴァリ一は打ちのめされ、そして離したものを再び抱きしめるために行動する。  読み終わって、俺の心は清清しかった。よく説明できないけれど、目の前がクリアになるような気がした。  遠い過去の自分が冬の外で得られなかった清清しさが、こんな小さな本の中にあったなんて。これを当時知っていたら、悩み続けることなく少しは自分を受け入れていたかもしれない。  15歳でこの本をみつけていて、そしてそれを俺にくれたコウタロウ。それを読みもせず、20歳を迎えた俺。なんだか切ない。  無駄な時間をすごしたような後悔がわきあがってきたけど、穏やかな気持ちだったから素直に受け止めた。もう少し素直になろうかな  電話は恥ずかしいからメ一ルをする。ありがとうと、くれたとき読まなかったことを後悔したこと。心が綺麗になったような気がするって。  コウタロウからの返事『たまには自分をお風呂に入れてあげないとね。さとは綺麗なんだから』  自分のことを綺麗だといってくれる存在は大事にしなくちゃ。  相手は自分にふさわしくないと、相手を想って手を離したノヴァリ一と自分を重ねる。俺はアブノ一マルだからコウタロウは汚しちゃいけないとずっと思ってきた。コウタロウはまだ俺の傍にいるけど、いなくなっちゃったら困るし。  え……なんで困るんだ?  コウタロウがいなくなる可能性を思い浮かべたら、とんでもなく怖くなった。コウタロウが傍にいなかったらどうなるだろう俺。  好きな相手と身体を重ねたことがあるとコウタロウが言った時のショックを思い出した。そして朝にみた綺麗なコウタロウの顔も。  心臓が痛い、キュ一ンと音がきこえるくらい。  黙って座っていられなくてウロウロ歩き出した。だってなんかとてつもないことに気がついてしまった気がする……俺って、たぶんコウタロウのことが好き……?もしかして……ずっと好きだったのに気がついていなかった?  いやいやいや!!!!早とちりはいけない!思い過ごしだったらどうする!    コウタロウの寝顔を思い浮かべると盛大に心臓がバクバクしてきた!  綺麗なコウタロウ……顔に血が昇ってくる。たぶん俺真っ赤だ。  コウタロウの片思いって……相手は誰?イタイ痛い!心臓が痛い!  コウタロウが結婚して俺が友人代表のあいさつ……気絶しそうだ。    そしてどんなに頑張っても、男の俺はコウタロウの隣にいられない。そのことが何よりも悲しいを通り越して絶望。  間違いない。俺コウタロウに恋……してる。

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