人が傷心しきってる時に ピンボンうるさいな！ 勧誘なら怒鳴って 追い返してやる。 俺はご機嫌斜めに 玄関のドアを勢いよく開けた。 ｢何度もうるさいな！｣ そう口走って目の前に 立っている奴の顔を見ると 俺は思わず絶句した。 ｢何度もうるさくて悪かったな｣ 明らかに不機嫌な顔と声。 俺が知る部長そのもの。 な、なんでここにいるんだよ！ 俺は声も出せずに口をパクパク。 変な汗まで出てきた。 ｢来ちゃ悪いか？｣ 悪いもなにも理由が分らない。 ｢な、なんでここにいるんですか？ いきなり来られても迷惑です｣ 俺の言葉に部長の顔は 益々不機嫌になる。 ｢と、とにかく帰ってください！｣ 俺は勢いのままに言葉を 吐き出すと玄関を無理矢理 閉めようとしたのだが…………。 部長の靴がガッと 隙間に入り込み 見事に阻止された。 ｢な、なにしてるんですか！｣ ｢それはこっちの台詞だ、 俺を目の前にして閉めるとは いい度胸だな｣ ぐぬぬ…………。 どんなに頑張っても この人に勝てそうにない。 ｢開けろ｣ 部長の低音ボイスに 俺は渋々降参して 玄関を解放した。