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第25話

水を飲み終わると 背後であわあわしてるのが 気配でわかる。 1人で何してんだと 俺の悪戯心に火がついた。 俺はわざと軽く咳払いをして くるりと身体を反転さると、 視線に入った一之瀬は ビクンと身体を震わせ 立った瞬間、その場で 見事に崩れ落ちた。 やべ!面白すぎる。 もはや小動物だ。 俺は笑いを堪え近寄ると、 一之瀬をソファに戻し 覆い被さる。 このまま顔を近づけたら お前はどうする? 俺はまるで玩具を買い与えられた 子供のようにワクワクしながら 至近距離まで顔を近づけてみた。 がしかし──── 「や、やめてください!」 目の前の顔は俺から顔を背け 密着しかけた身体を必死に 押し返す。 なんだ……嫌なのか……。 「やーめた」 自分には面白くないという顔も 言葉もプライドが許さない。 俺があっさり引き下がると 一之瀬の顔は一瞬、 えって顔を垣間見せる。 その顔だよ、ほらもっと。 「帰るわ」 俺の欲望の為だけに その気もないのに言い放った言葉。 しかし予想を超えて 一之瀬の頬には涙が伝う。 げ────泣くのかよ! マジで!? 予想通りの反応をくれない 相手に俺は思わず 深い溜息をついた。 だめだ……調子狂う。

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