25 / 68
第25話
水を飲み終わると
背後であわあわしてるのが
気配でわかる。
1人で何してんだと
俺の悪戯心に火がついた。
俺はわざと軽く咳払いをして
くるりと身体を反転さると、
視線に入った一之瀬は
ビクンと身体を震わせ
立った瞬間、その場で
見事に崩れ落ちた。
やべ!面白すぎる。
もはや小動物だ。
俺は笑いを堪え近寄ると、
一之瀬をソファに戻し
覆い被さる。
このまま顔を近づけたら
お前はどうする?
俺はまるで玩具を買い与えられた
子供のようにワクワクしながら
至近距離まで顔を近づけてみた。
がしかし────
「や、やめてください!」
目の前の顔は俺から顔を背け
密着しかけた身体を必死に
押し返す。
なんだ……嫌なのか……。
「やーめた」
自分には面白くないという顔も
言葉もプライドが許さない。
俺があっさり引き下がると
一之瀬の顔は一瞬、
えって顔を垣間見せる。
その顔だよ、ほらもっと。
「帰るわ」
俺の欲望の為だけに
その気もないのに言い放った言葉。
しかし予想を超えて
一之瀬の頬には涙が伝う。
げ────泣くのかよ!
マジで!?
予想通りの反応をくれない
相手に俺は思わず
深い溜息をついた。
だめだ……調子狂う。
ともだちにシェアしよう!