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第45話

 待っている間もお腹はグーグー鳴り 部長がキッチンでなにやら作っている。 暫くしていい匂いが立ち込めた。 「出来だぞ、食ってその腹の音なんとかしろ」  部長が持ってきたのはチャーハンとスープ。 「余り物しかなかったからこれしかない」  これしかないってめちゃくちゃ美味しそう。 オレはゴクリと生唾を飲み込んで部長の顔見る。 「なんだよ、食えばいいだろう?」  オレは少し遠慮がちにしていたのだが お腹は鳴り続けるので手を合わせてから口に運んだ。 「美味しい」  お世辞とかそんなんじゃなくて、本当に美味しい。 口いっぱいに含んで食べていると目の前の顔は 少々呆れ顔。部長はオレと違い綺麗に食べている。  慌てて食べていたオレはお決まりのように 口に含みすぎて咽ると、呆れた顔は更に表情を変え 部長は無言で水を差しだす。  オレは水を飲んで口の中の物をリセットすると ようやく落ち着いてふーと息を吐いた。 「お前、馬鹿だろう」  うっ……そこまで言わなくても。 部長の綺麗な顔は眉を寄せ呆れ顔。 「そんな風に食わなくても逃げやしねーよ」  その通りです。俺はシュンとしながら 残りのチャーハンとスープを頂いた。 「ごちそうさま」  部長がそう言って自分の分を片付け始める。 オレは一粒も残すことなく食べきって手を合わせると 重たい身体を起こして食器をキッチンへ運んだ。 「いいから座ってろ」  強めの口調。でもそれは部長なりの 優しさだったりする。オレは言われた通りに ソファへと腰を下ろした。  美味しかったな部長の手料理。 顔も綺麗、身長も高くてスタイルもいい。 二十八にして部長。仕事も出来て部下の信頼も 熱い。ただ不器用で不愛想。 オレはこの人が嫌いだった筈なのに……。  キッチンで洗い物をするその背中を見つめると オレの心臓はドキドキと高鳴った。 なんか変な感じ。ついこの間までそんな 感情なんてなかった。 ただ見返したくて必死だった。 なのに今は……。  こんなの誰が想像した? 二人きりでしかも部長の部屋で エッチして食事作ってもらってなんて、 オレの顔はまた熱くなって真っ赤。 こんな顔見られたらまた意地悪される。 オレは必死で平静を装い、部長が洗い物を 終える頃にはなんとか顔の熱も引いた。

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