48 / 68

第48話

 ダイブしたベッドはフカフカで広い。 部長の策略で彼シャツ的なものを着せられて 彼のベッドに入っている。なんか変な感じ。  布団の中でぐるっと部屋を見渡すと モノトーンで統一された部屋は綺麗に 片付けられていた。 「まめなのかな?」  そう言えばリビングも綺麗だった。 そんな事を思いながらもそもそしていると ガチャっと部屋のドアが開く。 「あっ」  目が合って思わず声が出てしまった。 「なんだよ」 「何でもないです」  オレはそれだけ言って布団を頭まで被った。 だっていつも綺麗にセットして纏めてあるのに 下ろしてしかも濡れ髪……。 それだけでドキドキしてしまう。 「まあいいけど」  部長……いや聖夜はそう言って 当たり前のように横に来て布団に入って来た。 当然ベッドは一つだしそれはそうなんだろうけど あまりのドキドキにオレは背中を向けた。  「お、おやすみなさい」  上擦りそうな声で無意識にそう口にする。 眠くなんてない。寧ろ寝れる自信がないのだけど まともに顔なんて見れないよ。  恥ずかしさに震える。 聖夜は黙って後ろからオレを 引き寄せた。  やばい……。そう思った時、 静かに聖夜の声がする。 「おやすみ」  あれ?もっとなんか言われるかと 思ってオレは恐る恐る振り向くと、 一分経たないうちに聖夜は寝息を立て始めた。  「はや……」  あまりの速さに思わず頬を触ってみる。 しかし聖夜はピクリともしない。 今日は残業もしてたし……。 「疲れてるのかな」  いつもオレはほぼ定時で帰宅していたから 知らなかった。もしかして 毎日残業しているのだろうか? 会社で見る顔は眉間にシワを寄せた 表情ばかりでこんな無防備な寝顔なんて 見れる日が来るとは思わなかった。  まだ濡れた髪……。下ろしたその顔は 普段より若い印象で雑誌に出ている モデルなんかよりずっと整った顔。  オレこの人に抱かれたんだよな……。  そう思ったら冷めた筈の身体が熱を帯びた。 「寝よ」  まるで自分に言い聞かせるように 独り言。オレはいつまで経っても静まらない心臓を 落ち着かせ目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!