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第50話

 オレは布団の中でもぞもぞ。 はだけさせられたシャツを着なおして ひょっこりと顔出す。 起きた方がいいだろうか?  しかしいざ布団から出ようとすると 腰の辺りに重い痛みが走る。 「嘘……昨日は動けたのに」  ご飯食べに行けないじゃん。 途方に暮れていると暫くして ガチャリとドアが開いた。 「飯」  聖夜がぶっきらぼうに言って持ってきたのは トレーに乗せられた美味しそうなご飯。 「ここで食べていいの? 布団汚れちゃうかも……」 「どうせ動けないんだろう? 汚れたら替えりゃいいだけだ」  聖夜はそう言ってオレの前に ご飯を置いて出ていこうとする。 「聖夜?」 「俺は向こうで食べる、 いいからささっと食べろ」  ちょっと不機嫌そうな声。 でも優しんだ。  聖夜が出て行った部屋で 手を合わせてオムレツを口にすると それがめちゃくちゃ美味しい。  ただのオムレツ型にしてるだけだと 思ったのにちゃんと味ついてる。 サラダにベーコンとウインナー、パンにスープまで。  仕事だけの関係なら知らなかった一面。 料理も出来て気遣いまで……。 完璧すぎて何も言えない。  本当にオレなんかでいいんだろうか……。 複雑な感情を抱きながらもあっという間に完食。 食べ終わったトレーをベッド横に置いて 布団に横になる。 「食べ終わったか?」  ノックもせずに入って来た顔は やっぱりちょっと不機嫌。 「うん、美味しかった有難う」 「少し寝ろ、俺は残った仕事片付ける」  聖夜の一言にオレは思わず上体を起こした。 「仕事?休みも?残業してるんじゃ……」 「残業できるのは八時までだから 終わらないの」 「……」  オレなんて残業すらしてないのに……。 「とにかく寝てろ」  聖夜はそう言って食べ終わった 食器片手に出て行った。 オレは申し訳ない気持ちで布団に潜ると いつの間にか眠りに落ちた。  

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