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第51話

聖夜side  洗い物を終え寝室に様子を見に行くと 一之瀬はスヤスヤと寝息立てていた。 「……」  手を伸ばして一瞬躊躇う。 恐る恐る髪に触れると思ったより柔らかい。  誰かの寝顔を見るのはいつ振りだろうか。 正直もうないと思っていた。  仕事一筋。そう生きると決めて六年。 なのに……。 「お前は……」  言いかけてやめた。 口にしたら聞こえてしまいそうで。 俺は小さな溜息を一つ吐いて 書斎に足を向けた。  殆ど本に埋もれた部屋。 少しは処分しないとそう思いながら 忙しさを理由に放置してきた。  ディスクに向かいパソコンを起動 させてまた溜息。瞬間スマホが鳴った。 「もしもし?」  相手は涼介、まあ俺に電話してくる奴なんて あいつしかいない。 「よう、元気か?」  昨日顔合わせたばかりだろう……。 内心そう思いながらも相手をする。 「なんだよ朝から」 「あれから一之瀬とはどうなった?」  やっぱりそれか。めんどくせーな。 「お前に言う必要があるのか?」  少々不機嫌に応えると涼介はこう言った。 「俺なりに心配してんだぜ? お前がもう一度恋愛する気になったのか」  仕掛けておいてよく言う。 「お前のはただのお節介だ」  涼介とは中学からの付き合い。 高校も大学も一緒。まさか就職先まで 同じだと知った時は頭を抱えた。 「ははは」  こいつは本当に……。 「一之瀬なら寝てる」  俺の一言に涼介は一瞬驚いたが まるで安堵したかのように続けた。 「そっか一緒なのか……。 良かったよお前がその気になって」 「うるさい、仕事が残っている。切るぞ」  まだ何か言いたげだった涼介の言葉も 訊かずに俺はそう言って容赦なく電話を切る。  その気になって……。 涼介の言葉に俺の心は複雑な感情が渦巻いた。

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