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第27話
抗っていた一之瀬は
俺を睨みつけ口をへの字にする。
「お前……なんか勘違いをしてないか?」
俺の台詞に、
一之瀬は目を見開いて、
怒鳴り声をあげた。
「勘違いってなんですか!?
いきなり人の家に上がり込んで
意味不明なキスされて……、
誰だって困惑するじゃないですか!」
意味不明って……。
あれで理解してないのか?
面倒臭い……。
ついいつもの悪い癖。
そうやって応えないで
いれば当然怒りを買う訳で、
「一体どう言うつもりなんですか!」
当然の反応だが、
一之瀬はますます目を吊りあげ
声を荒らげた。
「どうって……俺が誰にでも
するとか思ってんの?」
平静を装って訊いてみたが、
「知りませんそんな事」
バッサリ!
こいつ────気が強い。
こんなに思い通りに
いかないのは初めてだ。
「………………」
暫しの沈黙。
くそ!好きとか言わないと
通じないのか?
それは言いたくない。
だけど……、
「貴方がなに考えてるか、
俺には全くわかりません」
そう言って、
一之瀬は覆い被さる俺を
無理やり退けようと必死。
今逃がしたら、
きっとこいつは
俺を避けるようになる。
それだけは面白くない。
だから────、
俺は力づくで一之瀬を
ベッドへと組み敷くと
思い切り抱きしめる。
「ぶ、部長っ!?」
明らか動揺した声。
俺はすかさず耳元に
唇を寄せ囁いた。
「好き……だ……」
突然の告白に一之瀬の顔は
熱を放ち真っ赤に染まる。
俺が密着した身体を解き放つと、
その目からはボロボロと
涙を溢れさせ呆然としている。
「一之瀬?」
多分、今までで
一番優しい口調だったと思う。
名を呼んだ俺が頬に触れると、
一之瀬はビクンと全身を震わせ
ようやく視線が交差した。
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