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第28話
湊side
い、今……この人なんて言った??
あまりの事に頭が真っ白。
泳いだ目がようやく交差すると、
見た事ないくらい
目の前の顔は真剣だ。
「聞こえた?」
き、聞こえてますが……。
まさかのまさか?
俺がいつまで経っても
阿呆ズラで返事をしないので、
痺れを切らしたのか、
部長の整った顔が
僅か数センチの距離まで
近づいてくる。
ドクン────!
やばい……息がかかる……。
「答えたくないなら訊くまでだ」
「え…………!」
戸惑う俺に構わず、
部長は頭を引き寄せると
耳元で囁いた。
「嫌なら突き飛ばせ、
そうじゃないなら大人しくしてろ」
どう言う意味!?
そう言葉にするはずが、
俺はあっという間に
部長に唇を奪われた。
「ん!!」
抵抗ではないが
俺は一瞬目を見開く。
好き────、
今更ながらに胸の奥に
ありえない二文字が響いて
俺の身体を熱くさせる。
「んっ……んぅん……んっ……」
頭をフル回転しても
それが理解出来ない自分。
ただその間も、
口内に舌が侵入し、
絡みつく部長のキスは
深くなるばかりで、
俺の脳内は真っ白にボヤけていく。
流される……でも嫌じゃない。
寧ろ嬉しい……。
どうしよ────。
あんなにムカついていた
人なのに、嫌悪感より
気持ちよさが勝ってしまう。
予期しない展開と気持ちは
抵抗と云う選択肢を無くして、
そのまま腕の中へ引き込まれた。
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