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第62話

 見慣れないテレビを見ていると、隣にいた一之瀬の顔が俺の肩に寄りかかる。甘えているのかと思いきやスース―と寝息を立てているではないか。 「しょうがねーな」  俺は一之瀬をソファに寝かせ毛布を持って来て掛けてやった。本当に良く寝る奴だ。俺はどうしたものかと自分の部屋に行く。確か読みかけの本があったはず。俺はそれを手に取り、ソファに戻る。一之瀬は穏やかな寝顔で気持ち良さげに寝ていた。 「どうするか」  俺は一之瀬の頭を浮かせ座ると膝に頭を乗せてやる。膝枕なんて初めてじゃないか? そう思いつつも俺は読みかけの本を広げ読書にふける。休日をこれだけのんびり過ごすのはいつぶりか……。いつの間にか膝にいる存在も忘れ俺は本に夢中になった。 何時間過ぎたか、本を読み終わると一之瀬が動いた。 「うーん」  俺は本をテーブルに置いて様子を見るとゆっくり目を開ける。寝ぼけ眼で俺と視線が合った。 「起きたか?」 「うん、……はっ」  一之瀬はようやく状況を飲み込んだようで、慌てて飛び起きる。辺りをキョロキョロして俺に視線を戻すと申し訳なさそうな表情でこちらを見た。 「すみません」  何故こう言う時だけ敬語なのか。まあいいけど、俺は素っ気なく言った。 「別にいいんじゃないの」  俺は解放され本を持って立ち上がると部屋に足を向ける。一之瀬はソファに正座したまま動かない。全くいつまでそうしているのか。  時刻は既に夕方四時を回ったところ。夕食にはまだ早い。この後どうするか考えながら俺はリビングに戻ると一之瀬は溜息を吐いていた。 「いつまでそうやっているつもりだ」 「だって……」  だってもクソもないだろうに。俺の方が溜息吐きたいわ。俺は一之瀬の元へ行くと頭をポンポンとした。 「聖夜……」 「別に今更遠慮する仲でもないだろう」    俺の言葉に一之瀬は恥ずかしそうにしている。膝枕なんてセックスより恥ずかしくないだろうに。 「変な奴」  俺は少々呆れ声で言うと一之瀬は尚更赤くなった。強気な癖に変なとこで照れる奴だ。 「夕飯までにまだ時間がある、寝ててもいいぞ」  俺が促すと一之瀬は頭を横に振った。すっかり眠気が覚めたようでなにより。 「夕飯までどうする?」  一之瀬は起きだして何かを考えている。暫くの沈黙、俺は待ちくたびれて一之瀬の隣を陣取ると顔を引き寄せてキスをした。 「セックスでもするか?」 「なっ……」  半分冗談で言ったんだけどな、目の前の顔は口をパクパクさせながら大慌て。 「馬鹿な事言わないでください」  こう言う時はハッキリ物を言う。未だにこいつが把握できない。気を許しているのかまだ警戒しているのか。それすらも分からない。まあ俺以上にこいつは俺の事が分かっていないんだろうけどな。 「冗談だよ」  俺の言葉に口を開けてポカーンとしている。俺が冗談言ったらそんな顔をするのか。しかし一之瀬の反応ははっきりしていて面白い。もう少し虐めて見てもいいかもしれないな。  そんな悪巧みをしながらも一之瀬を眺めた。どこにでもいそうな童顔な顔。まだ学生じゃないかと思うくらいの見た目でチンチクリン。俺が何故こいつに惹かれたのか自分でも分からない。

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