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第32話

穴があったら入りたい。 そんな思いの中、暫しの沈黙で 余計に恥ずかしい。 オレは真っ赤な顔を上げられないまま 埋まっていると、頭の上から声がする。 「気持ち良かったろう?」 な、なんて事を訊くんだ。 オレはますます顔を赤らめ フルフルと首を横に振る。 「素直じゃないな……」 う、うるさい。 そんな風に思いながらも 部長がギュッと抱きしめてくると 恥ずかしさ以上に心地いい。 「おい、そんなにくっつくと 続きしたくなるんだけど」 続き——?オレは頭をフル回転して ようやく意味を理解し、 慌てて身体を離す。 「な、なにを言っているんです」 ついつい出た声は上擦り、 身体はカーッと熱くなった。 「はは、お前らしくないな? て言うか丸見えだし、耳まで赤いぞ」 「うわ——っ」 オレは自分の下半身に目を落として、 猛スピードで布団に包まった。 部長はそんなオレを眺めて大笑い。 だけど、部長がこんな風に笑うのを 初めて見る。笑われて複雑だけど 何故か胸が高鳴った。 「そんなに見つめるなよ、 それとも強請っているの?」 こ、この人誰?普段とまるで別人! 「あ、あの……」 オレがめっちゃ小さい声で 言葉を振り絞ると、 部長は布団ごと身体を引き寄せる。 「まだ返事訊いてないんだけど」 う、それは……。 「今更断るとか……ないよな? 嫌なら抵抗しろって言ったし?」 言いました……。 正直気持ち良かったし。 悔しいけど、オレは 部長が好きです。 「オ、オレは……部長が…… 部長が……す、好きです」 それ以上は言葉に出来ず、 オレは布団を頭から被る。 部長が今どんな顔をしているか なんてわからないし、 とてもじゃないけど見れない。 でも、部長はオレを 包み込むように抱きしめて、 耳元に熱い吐息がかかる 距離で囁いた。 「……俺も好きだよ……湊」 まさか部長のこんな台詞を 訊く日が来るなんて……。 その日、それ以上オレに 手を出すことなく帰宅した。

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