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第33話

 次の日、夢心地のまま出社。 いつものように挨拶をすると みんながおはようを返してくれる。 何も変わらない日常。当たり前か。 オレはふと部長席に目をやると、 昨日のあれは嘘だと言わんばかりに ムスッとした表情でパソコンに向かう姿。   ん?そう言えばおはよう 言われていないような? それにオレに絶対気づいている筈なのに 全くこちらに見向きもしない。 ムム!なんだあれは……。 「ちぇ……」 朝はちょっとムカつく。 そのくらいの気持ちでいたのだけど。 その後、何度か視線を送るも全てスルー。 まるでオレの事を 相手にしていないかのように 見向きもしない。 「あの……部長……企画書」 そう言って声を掛けても 視線はパソコンに向けたまま。 「そこ置いとけ」 それだけであっさり席に戻された。 「なんなんだよ」 結局そのまま昼休み。 今度こそと意気込んだが 既に姿はなくオレはため息。 やっぱりあれは夢だったのか? 怒りから段々と不安が強くなる。 「よう一之瀬、どうした難しい顔して」 本当この人はなんで いつもタイミングよく現れるのだろう。 「課長……なんでもありません」 いや待てよ?普段ならあいつと何かあった? 的な話が来るのに来ない。 課長はまだ知らないのか? 「昼飯、まだなら一緒に行こうぜ」 部長は素っ気ないし、オレのよく知っている 不愛想なまま。課長もなにも知らない様子。 やっぱり昨日のあれは……。 「おい一之瀬?」 「すみません。行ってください。 オレ食欲ないんで」 課長はいかにも心配げな表情を向けたが 今はその余裕がない。 昨日の事が嘘のように思えて オレの胸はギュッと締め付けられる。 結果、午後になっても部長は オレは気にする事はなく、 寧ろ視線すら合わせてもらず、 側を通るものの、 全く相手にされていないと 思い知るだけだった。 就業時間になってオレの中は 怒りより寂しさでいっぱいになっていた。 こんなの納得いかない。 あれだけの事をされ、 恥ずかしい台詞まで言われて、 なかった事なんて出来る訳がない。 オレは帰ると見せかけて、 地下駐車場へと向かった。

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