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第34話

 駐車場は薄暗く数百台の車が停まっている。 当然オレは部長の車がどれかは分からず、 エレベーター近くで待機。 しかし、 かれこれ二時間待っても 部長の姿はなかなか見えない。 オレは何度も時計を 見てはエレベーター付近に視線を送る。 「遅いな……」  残業ってそんなにあるのか?と言うより、 もしかして部長は毎日 こんな時間まで仕事をしている? そう思ったらなんだか申し訳ない気がした。  このままここで待ち続けていいのだろうか? そう思い始めてから一時間、カツカツと エレベーターの方向から足音が聞こえ 俺はハッと振り向いた。 「……お前なにやってんだ?」    部長はいるはずもない オレを見て目を丸くしてる。 「何って……待っていたんです」 「はあ? 今までずっと?」  オレが小さく答えると 部長は時計に目をやり 深く溜息を吐いた。 見るからに険しい顔。  オレは不安になる。 今日の態度と言い、 ストーカー並みに 待ち伏せされて正直面倒な奴だと 思われているんじゃないか そんな風にしか思えなくて、 オレは乾いた笑いで謝る。 「はは、すみません迷惑ですよね…」  オレは自分の中に込み上げる 初めての感情を抑え、 その場を離れようと部長に背中を向けた。    聞こえたのは部長の深い溜息。 瞬間、チクリと胸が痛む。 馬鹿だオレ……。 目の前が滲んで見えた時、 部長の声が聞こえた。 「……のせ、一之瀬!」 「えっ?」 「えっ? じゃねーよ、乗れ」  思わず返事をしたが間抜けな声だった。 部長の明らかに不機嫌な声なんだけど……。 「アホ面下げてないでさっさと乗れ」  うっ……アホ面って、 仮にも三時間待ったのに? いやそれはオレの勝手だけど、 なんかムカつく。  でもこれ以上 もたもたしていたら雷が落ちそうな 剣幕なので大人しく従い助手席に乗り込む。  隣に乗り込んだ部長は 眉にシワを寄せ無言のまま 車を発進させた。 車内は当然無言の状態が続き、 オレは目的地も 知らされぬまま会社を後にした。

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