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第3話
そんな俺の側に愛想振りまいて
やって来たのはこいつ!
「何また無愛想面に磨きかけてんだよ」
本当いつものながら一言多い。
俺のディスクに淹れたて珈琲を
置くとニヤッとすのは
俺の同期で課長として働く
真壁涼介
その涼しい顔立ちに
インテリ的な眼鏡をかけ
いつも見透かしたような目で
俺を見る世話焼き番長だ。
「遊びじゃないんだ、仕方ないだろ?」
涼介はふーんなんて顔して
珈琲を口に運ぶ。
俺は溜息吐きながら珈琲をごくり。
「また一之瀬追い払ってたな」
言い方────相変わらず直球だな。
「駄目なもんは駄目なんだよ」
「分かるけどさ、ちょっと可哀想」
涼介は俺と違って部下とは円満。
俺には到底出来ないやり方。
「一回ちゃんと話してみれば?
なんか変わるかもよ?」
何が変わると言うのか────、
俺はそう言う事は苦手なんだが?
「そうだ!飲み行こうぜ3人で」
涼介の提案に俺は思わず
口にした珈琲を吐き出す。
「はぁ?ありえないだろ」
「何も2人でなんて言ってないだろ?
俺も付き合うからさ」
ちょっと待て何勝手に決めてんだよ!
無意識に涼介を睨み付けるが
そんなのお構い無し。
「一之瀬」
おい!誰も行くなんて言ってないぞこら。
「なんですか課長」
言葉を挟む前にやって来た
一之瀬。だけど俺には全く
目を合わせない。
「今日俺と如月と飲み行くぞ
夜空けとけよ?」
涼介の提案に一之瀬も
吃驚して黙る。
ほらこいつだって望まない。
今すぐ辞めよう────が、
「────分かりました」
はぁ?何OKしてんだこら。
俺は御免だぞ。
口を開けたままボケっとしてる
俺を他所に涼介は爽やかに
だが、その眼鏡の奥が確かに
愉しんでいるタコスケ。
「決まりだな如月」
俺の意思なんて何処にもなく
ただただニヤつく涼介は
俺の肩を軽く叩いた。
不機嫌な俺は益々
無愛想な面になり
返事をした一之瀬にも
強い眼差しを向けた。
だけど────、
「仕事戻ります」
俺の睨みなど全くスルーで
頭をペコリと下げると
そのまま席に戻って行った。
ムスッとする俺に
涼介はまあまあなんて
笑ってやがる。
結局断りきれない俺も悪いが
その日は1日眉をしかめたまま
仕事に追われた。
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