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第9話
聖夜side
我に返りハッとした時には手遅れ。
完全に唇を重ねていた────。
なんで?なんでだ俺……。
冷静になれ!こいつが
ぐちゃぐちゃ訳分からない事
言い出して、五月蝿いから
黙らせようと────。
思い出した瞬間俺の顔は
火を吹きそうな程
熱くなるのを感じた。
「ぶ……ちょ……」
ビックリした表情で一之瀬は
こちら向きさっきまで
目が逝っていたのに
焦点がバッチリ合っていた。
「………………ッ」
俺は瞬間くるりと後ろを
向き独りブツブツ。
「ぶ、部長……今のは?」
それ以上訊くな────
俺は火を吹きそうな顔してるのに
多分真っ青な色してんだろ、
一言も答えること無く
俺は歩き出した。
「ちょ、部長待ってください」
後ろから聞こえる慌てふためいた
一之瀬の声。そんなもん構えるか!
俺は歩みを早め逃げる。
「待って────ッ」
その言葉の後にバタっと
激しく音がした。
恐らく転けたんだろ。
酔いが冷めても脚はまだ……。
今のうちに逃げろ────。
はっきり言って自分から
した行為だが……だけど
ありえない!ありえないんだ!!
俺があの一之瀬にキス?
キスしたんだ────。
悪夢だ────そうだ酔ってるんだ。
そうだ!俺が一之瀬にそんな気持ちを
抱くなんて絶対ありえない…………。
俺は自分が仕出かした行為を
認める事なくその日は帰宅した。
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