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第16話
人気のない場所に連れてこられ
まだ涙が止まらない俺を
戸惑いつつも宥めてくれる
課長の優しさに胸が熱くなった。
「どうした一之瀬?」
課長の声は酷く優しい。
俺は懸命に涙を拭う。
「な、なんでもないです……
ご迷惑お掛けしてすいません」
「は?泣いてんのになんでもないとか
ありえないだろう」
う…………そうだけど
どう説明していいか分らない。
「もしかして聖夜の事?」
課長って鋭いよね。
この人見てないようで見てる。
どうしよう…………。
「アイツの事なら話して?
力になれるかもしれないし」
そう言って頭をポンポンされた。
俺は迷ったけど
全ての事情を話した。
暫しの沈黙────。
そして────────、
「はぁ?」
課長の大きな声が響く。
俺はその声にピクンと
身体を震わせた。
「アイツめ!!」
俺は汗をかきつつ
慌てながら言葉にする。
「か、課長……あの」
「俺がどう言うつもりか
問いただしてくる」
「か、課長────」
事情知った課長は
凄い剣幕で俺の制止を
振り切り会社に戻ってしまった。
やばい────どうしよう。
俺は着いていく勇気もなく
その場でウロウロ。
だけど、ここにいたら
怒った部長と鉢合わせするかもしれない。
俺はそれが怖くて
課長がオフィスに着いた頃には
その場から逃げ出していた。
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