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第17話
聖夜side
オフィスにポツリと一人。
部下が帰宅した静寂な空間で
カチャカチャとキーボードを
寂しく打つ音だけが響いた。
「はぁ…………」
俺は何をやってるんだと
ついつい溜息を吐きながら
パソコンを打つ手を止め
椅子に凭れながら
ネクタイを緩めたその時だった。
「聖夜っ!!」
凄まじい勢いで俺の
机の前に怒鳴り込んで来た。
「なっ……なんだよ」
涼介ははぁ……はぁ……荒らげた
呼吸を整えるとバンと机を
勢いよく叩いて迫ってくる。
「どう言うつもりだっ!」
俺には話が見えなくてキョトン
とした顔を見せると
益々涼介は声を荒らげた。
「とぼけんなっ!一之瀬の事だ」
一之瀬────その言葉に
ようやくハッとする。
「泣いてたぞアイツ」
え!?泣いた?一之瀬が?
その言葉でチクと胸が痛んだ。
あれ?なんだろ……。
「いやそれはだな……」
もごもごしている俺に
いつもはタコスケな涼介も
はっきり言い放った。
「お前一之瀬が好きなんだろっ?」
はい!?今なんて?
誰が誰を好きだって?
「俺が?」
「他に誰がいる」
誰って────────?
俺が一之瀬に惚れてる!?
馬鹿な────まさか有り得ない。
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