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出逢い 1

side京 「…これで取引完了だ」 「あぁ。世話になったな。次も頼む」 その言葉には返事をせず、足早に部屋を出る。 ビルの入口まで送ってきた下っ端を尻目に、俺は銀世界に足を踏み入れた。 銀世界といっても、地面に積もっている分はほとんど人に踏み荒らされて、それなりに汚い。 そもそもこんな路地裏では、綺麗なものも廃れて見えてしまうだろう。 未だに降り続けるそれは、俺の肩を濡らしてゆく。 「チッ…傘持ってきてねえぞ」 舌打ちを1つして、懐から煙草とジッポーを取り出す。 キンッ、 ジッポーの心地よい音のすぐ後。 肺がいっぱいに満たされる。 「…ふぅ」 ようやく一息ついた俺は、さらに人気がない方へと歩き出す。 「…次は、Kビルか…」 ___________________________________________

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