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出逢い 3

「…っ」 目を、奪われた。 白い肌に薄いくちびる。艶やかな黒髪。 それに、片目が灰色のオッドアイだ。 ため息が出るほどに美しかった。 そいつは俺が目を見てることに気づくと、怯えるようにして慌てて目をそらす。 あまり見られたくないのだろうか。 そいつの肩に降り積もった雪を払いながら問う。 「…行くとこあんのか」 「…ない」 鈴を転がすような、そんな声で。 そんなことを言われたら。 「…俺んとこ来い」 こう言うしかないじゃないか。 「…ん」 小さく、それでも確かにそいつは頷いた。 「…ほら、掴め」 俺が差し出した手に、そいつはそっと自分の手を乗せた。 冷えきったその手をしっかり掴むと、そいつを抱え、胸に抱き寄せた。 抵抗しないのか、する力が残っていないのか。 そいつはぐったりと俺に体重を預けている。

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