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出逢い 4
「…あ、若宮さん。柊です。少し急用が入ったので…えぇ、申し訳ありませんが」
器用に携帯を取り出し、次のクライアントに電話をかける。
「…はい。では詳しい事はまた…」
電話を切り、自分が抱き抱えているやつを今一度見る。
緊張の糸が切れたのか、すやすやと眠っているが、発熱しているのか、体が熱い。
早く家に帰らないと。
そいつを抱え直し、今来た道とは別の道に引き返す。
振り続ける雪が、最初は鬱陶しかったのに。
肩に積もる雪が、妙に心地よく感じた。
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