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出逢い 5
「よっ…」
家に帰るなり此奴をベッドに寝かせる。
熱が上がっているのか、かなり辛そうだ。
とりあえず、布団を首まで掛けてやる。額に冷却シートを貼り、薬を飲ませると、幾分か穏やかな顔になってすぅすぅと寝息を立て始めた。
そいつの寝顔を見て、思わずため息をつく。
さて、どうしたものか。
連れて帰ったはいいが、これからやる事も問題も山積みだ。
そもそも此奴は誰だ。名前すら聞いてねえぞ。
「…調べるか」
…でも拾ってしまったものは仕方ない。
しばらくは住まわせてやろう。
どうせ家出かなんかだろ。
俺はこいつの事を調べるべく、パソコンを起動させた。
あいつを見つけた辺りの監視カメラをハッキングして、センサーが反応しているものを片っ端から調べていく。
「…いた」
カメラに映るそいつは、何かに追われているわけでもなく、ただゆっくりと歩みを進めていた。
そいつが歩いてきた方角にある監視カメラをどんどんハッキングしていき、どこから来たのかを突き止める。
「ここか…?」
画面には古いアパートから出てくるそいつの姿。虚ろな表情で、生気を感じられない。
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