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地獄 1
───ピチョン、
水滴が落ちる音で、ゆっくりと意識が浮上した。
目線だけで周りを見ると、そこはバスルームで自分は倒れているんだと知る。
なぜ倒れているのか、いつから倒れているのか。
何も思い出せない。
もう何日監禁されているのか。
ガリガリに痩せ細った手首が、時間の長さを物語る。
衰弱してきているのは自分でもわかっていた。
だけど自分ではどうすることも出来ない。
もう1人で普通に歩くことは困難だし、平衡感覚もなくなってきている。
壁に支えられながら立ち、蛇口を捻って水を出す。
そんな簡単な事でも、今の自分には大変な作業で。
震える手でお椀を作って、水を飲んだ。
蛇口を締める手にも力が入らず、小さな水滴が何粒も排水口に吸い込まれてゆく。
ずるずると床に座り込むと重力に逆らえず、そのままコテンと倒れた。
「…、ん…れ、ん」
掠れた声で何回も呼ぶ。
届かないとは分かっていても、呼ばずにはいられない。
ひたすらに無音な空間は苦痛だ。
最初は信じていた蓮への希望も、日を追うごとに薄れていった。
もしかして、蓮は俺の事を探してないのではないか、本当はいなくなって清々してるのではないか───
負の感情に自分が吸い込まれていく。
分かっていても、止まる術はなく、止めてくれる人もここにはいない。
それでも一縷の望みを信じたくて。
「れ、ん…れんっ…」
届かないとわかっていても
呼んでしまう俺は馬鹿だろうか。
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