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地獄 5

真っ暗な場所にいた。 暗くて、何も見えない 遠くで母親の声がする。 『あんたなんか産まなきゃよかった───』 その声がいくつも重なり、脳に直接谺響する。 ごめんなさい、ごめんなさい 見えないどこかへ向かって必死に叫んだ。 それでも声は消えなくて、それを打ち消すように大声で叫び続ける。 ふと、息継ぎをした瞬間 背後からナニカが追いかけてくる気がした。 俺は慌てて逃げ出そうとするけれど、足を引っ張られて思い切り転んだ。 引っ張られた方の足を見ると、そこには足枷がはまっていた。 逃げたいのに、逃げれない その声からも、足枷からも。 自分は真っ暗闇な奥底でしか生きられないと知りつつも 気づけば光を探してる 無理だとわかっていても、願ってしまう 誰か助けて、俺を見つけて──── 「…たすけて」

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