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地獄 7
一瞬で部屋の温度が下がった気がした
威圧的なオーラを纏いながら部屋に入ってきたのは
「…っ」
俺をこんな状態にした張本人である若頭。
手にお粥?がのったお盆を持っている。
自然と呼吸が浅くなり、それを落ち着けるようにきゅっと心臓を握りしめる。
「……」
若頭は何も喋らず、ベッドの縁に座った。
自分からなにか言える雰囲気じゃなくて、しばらく静寂が続いたのち
若頭が静かに呟いた。
「…食えるか」
「…!っぁ…ぃ」
まさか普通に話しかけられるとは。
咄嗟のことで驚いて慌てて起き上がろうとするが、力が入りきってない腕は体重を支えることができず、体はそのままベッドへと逆戻りした。
…やばい、はやく、はやく起き上がらないと
また、あの時みたいにっ…
この前のことを思い出して、目の前が真っ暗になる。
はやく、はやくはやくはやく…っ!!
機嫌を損ねる前に、やらないと…!
だけどそんな想いに反し、体は思うように動いてくれなかった。
──殴られる
呼吸が上手くできない、目の前がぐるぐるして苦しい
完全にパニック状態に陥っていたその時、若頭の手が自分の方に伸ばされた。
ヒュッと一瞬止まる息
なぐられる…!!
そう思ってぎゅっと目を瞑ると。
「…ぇ?」
いつまで経っても拳は飛んでこなくて、代わりに背中に暖かさを感じた。
布団の中に手を入れて、俺の膝裏と肩に手を回した若頭は、そのまま姫抱っこの要領で上半身を起き上がらせてくれた。
そしてそのまま、俺の呼吸が落ち着くまで背中をさすってくれた。
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